研究課題/領域番号 |
24680044
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
保前 文高 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (20533417)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知神経科学 / 発達脳科学 / 言語獲得 / 語彙 / 脳機能計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳幼児が語彙を獲得する過程とその基盤となる神経メカニズムを明らかにすることである。ボランティアでご協力いただく乳幼児を募集し、研究の趣旨を乳幼児の保護者に説明した上で、同意書に記入いただいた方を対象に質問紙調査と視線計測、脳波計測をおこなった。昨年度に引き続いて本年度も、のべ130名の乳幼児に、研究に参加していただいた。 研究課題としては、既知語の検出について検討することを継続して進めた。乳幼児が理解・産出している語彙を保護者に対する質問紙(日本語マッカーサー乳幼児言語発達診断質問用紙(小椋・綿巻、2004))を用いて調査した。質問紙調査の結果から、月齢に応じて語彙数の増加が見られ、名詞相当語の中でも、特に生物や身の回りにある道具などの特定の範疇にある語に増加が多く見られることが明らかになった。また、縦断的な調査の結果からは、12か月齢において理解語数が多い児のほうが、18か月齢においても理解語数が多い傾向が認められた。視線計測に関しては、質問紙調査の結果をもとにして、乳幼児の理解の程度が高い語と理解の程度が低い語を選び、その語に対応する画像を提示しながら音声で単語を提示した。乳幼児に画面への注意を促すような一文を音声で提示した後で、音声で単語を提示すると、新規語の場合には、停留時間が長くなる傾向が現れた。語彙数との関係性については、解析を進めている途中である。 リアルタイムフィードバックシステムを乳幼児に適用しながら、視線と脳波の同時計測を行うことを試みてきたが、安定して計測が行える状況を整備することができた。既知語、未知語、新規語の間で瞳孔径に違いが現れることが明らかになったため、脳波と併せて解析を進めている。乳幼児を対象とした脳機能計測については、脳波以外の方法についても可能性を検討して、学術会議で情報交換をおこない、また論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、視線計測と脳波計測を乳幼児に適用して言語獲得に迫ることである。そのためには、研究に参加していただく乳幼児のボランティアを募集することが必須であるが、当初の予定通りに、これまでに確立した方法によって多数の乳幼児に協力していただいた。その結果として、質問紙調査と視線計測を中心にして既知語と新規語についての検討を進めることができた。また、リアルタイムフィードバックシステムにより、視線位置、瞳孔径と脳波の同時計測を行うことが順調に進められている。乳幼児を対象とした脳機能計測については、脳波以外の方法についても可能性を検討して、学術会議で情報交換をおこない、また論文として発表しており、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
乳幼児を対象として音声に含まれる既知語の検出と未知語(新規語)の獲得に関する研究をさらに進める。特に、新規語を獲得する過程に注目する。今後は確立した実験系を有効に利用して、より多くのデータを取得したいと考えている。保護者に対する質問紙を用いて、乳幼児が獲得している語彙を調べる調査は継続して行う。この質問紙に基づいて得られる単語理解の程度と、視線計測および脳波計測の結果を統合して既知語と未知語の検出について比較検討を進める。これまでに得られた結果をまとめて、学会等で報告する予定である。乳児はボランティアでご協力いただく研究協力者を募集し、研究の趣旨を乳幼児の保護者に説明した上で、同意書に記入いただいた方を対象に計測をおこなう。また、研究協力をして下さったご家族には、研究の報告をニューズレターの形でお伝えしており、継続して発行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、計測機器類、および、コンピューターが順調に稼働して、修理や新規購入をせずに運用することができたためである。また、データの取得に専念したため、解析の補助や専門知識を提供してもらうための人件費を使うのを押さえたことも理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
確立した実験系において、より多くのデータを取得するために、人件費、脳波計測用の機器・消耗品やノートパソコンの購入が必要となる。また、データの整理の補助をしてもらうアルバイトを雇用し、得られた結果について議論をするために専門知識の提供を依頼する予定である。
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