本研究の目的は、乳幼児が語彙を獲得する過程とその基盤となる神経メカニズムを明らかにすることである。ボランティアでご協力いただく乳幼児を募集し、研究の趣旨を乳幼児の保護者に説明した上で、同意書に記入いただいた方を対象に質問紙調査と視線計測、脳波計測をおこなった。昨年度に引き続いて本年度も延べ約100名の乳幼児に参加していただいた。最終年度の延長をして、6か月以降12か月までと15か月以降18か月までの月齢の乳幼児に多数協力して頂くことができ、その時期のデータを加えることができた。 質問紙調査では、対象児の理解語数と産出語数を保護者へのアンケート形式で尋ねた。15か月から18か月齢ではそれ以前に比べて理解語数の平均値が高くなることが示されるとともに、特に理解語数が少ない用事の比率が下がることによって平均値が上がる傾向が認められた。また、18か月齢以降では、それまででは顕著ではない男児と女児の平均値の違いが現れることも見いだした。単語数の個人差は大きく、平均値とともに個人ごとの増加を検討することが重要であることが確認された。 視線計測装置を用いたリアルタイムフィードバックシステムでは、既知語と未知語の検出について瞳孔径を検討したが、特に未知語に対して理解語数の増加とともに変化量が変わることを明らかにした。このような傾向は新規語では現れず、未知語と新規語には処理の違いがあることが示唆される結果となった。視線と脳波の同時計測では、6か月以降12か月以下の低月齢群も含めて計測を行った。このほか、既知語と未知語を用いた視線計測についても解析を進めた。得られた研究結果は、招待講演で報告するとともに、研究にご協力頂いた保護者を主な対象とした一般公開のフォーラムを開催して、その場においても報告と解説を行った。また、乳児期の脳機能計測について学会等で発表し、言語獲得と脳の発達について議論した。
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