• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

炎症沈静・慢性化の根幹機構の解明:システムメカノバイオロジーの創成へ

研究課題

研究課題/領域番号 24680049
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

出口 真次  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30379713)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードメカノバイオロジー / 張力ホメオスタシス
研究概要

ヒト骨肉腫U2OS細胞と胚性血管平滑筋A7r5細胞を用いて張力ホメオスタシス機構と炎症促進シグナルの持続化の関係について調べた。まず細胞接着斑タンパク質の一つpaxillinのpY118における脱リン酸化状態が、細胞の張力と高い相関があることがわかった。この相関はマイクロパターニング技術を用いて内因性のmyosin II依存の張力を調節することによって確認された。ここで、マイクロパターン化された細胞の辺縁部分に沿った張力の勾配は有限要素解析を用いて調べ、paxillinのリン酸化は抗体を用いた染色強度から調べた。そこでpaxillinのリン酸化レベルを指標として細胞の張力を評価しながら、炎症を促進する因子であるNF-κBのリン酸化を観察した。細胞が張力ホメオスタシスを行うことができない状態をマイクロパターンによって人工的に作り、NF-κBを観察したが優位なリン酸化レベルの変化は認められなかった。一方、張力ホメオスタシスが達成できない場合には異常なラメリポディアの発生が見られたために、炎症シグナルに関連のあるRac1の特異的阻害を与えたところ、この異常なラメリポディアが抑えられた。つまり細胞が張力を一定値に保つことができない場合には、おそらくRhoAの活性化が抑えられるためにそれに相反する役割を果たすRac1が持続的に活性化されたと考えられる。張力ホメオスタシスを起こすことができない細胞におけるRac1の持続的な活性化は、最終的には炎症を促進するシグナル群の活性化につながると考え、現在さらなる検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、炎症を促進するシグナル分子の持続的な活性化が、細胞内の張力ホメオスタシスの喪失と相関があることを裏付けるデータが得られている。細胞内の張力を人工的に調節したり、観察する技術の開発も進んでおり、今後の研究の展開に期待をもっている。

今後の研究の推進方策

これまでは細胞内の張力を簡便に観察することができなかったために、免疫染色法に基づいて個々の細胞について、時間をかけて調べる必要があった。しかしこれまでよりも簡便に細胞内張力を観察する技術が開発されつつあるので、今後はより網羅的な解析を行うことができる準備が整った。特に特定の分子群に着目して網羅的なノックダウンを行い、張力の発生に関わる分子のスクリーニング実験を行うことを検討している。これにより、張力の発生に直接関わるmyosin IIの直近の小数のシグナル分子に着目するだけでなく、より広範なシグナル分子を対象とした実験を行うことが可能となり、炎症促進につながる反応との関連もより詳しく迫ることができると期待している。

次年度の研究費の使用計画

研究代表者は今年度に所属大学が変わった。それに伴う引っ越し作業と実験室の立ち上げのためにおよそ1ヶ月程度の遅れたが生じたために、次年度使用額が生じた。
消耗品として利用する。これまで以上に広範にデータを取得できる新しい技術開発を行ったために、遅れていた実験についても速やかに遂行することができるために使用計画に特に変更はない。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Development of motorized plasma lithography for cell patterning2014

    • 著者名/発表者名
      Deguchi, S., Nagasawa, Y., Saito, A.C., Matsui, T.S., Yokoyama, S., Sato, M.
    • 雑誌名

      Biotechnology Letters

      巻: 36 ページ: 507-513

    • DOI

      10.1007/s10529-013-1391-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aligning cells in arbitrary directions on a membrane sheet using locally formed microwrinkles2014

    • 著者名/発表者名
      Saito, A.C., Matsui, T.S., Sato, M., Deguchi, S.
    • 雑誌名

      Biotechnology Letters

      巻: 36 ページ: 391-396

    • DOI

      10.1007/s10529-013-1368-2

    • 査読あり
  • [学会発表] 新しいtraction force microscopyの開発2014

    • 著者名/発表者名
      出口真次
    • 学会等名
      第8回メカノセンシング研究会
    • 発表場所
      理研CDB(神戸市)
    • 年月日
      20140318-20140319
  • [学会発表] メカノバイオロジー研究の裾野拡大につながる技術開発の取り組み2014

    • 著者名/発表者名
      出口真次
    • 学会等名
      生体機能の解明とその応用に関する研究会・第38回研究会(招待講演)
    • 発表場所
      名古屋工業大学(名古屋市)
    • 年月日
      20140307-20140307
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞による力の感知と応答の意義について:ストレスファイバーの役割を中心に2014

    • 著者名/発表者名
      出口真次
    • 学会等名
      第4回高度物理刺激と生体応答に関する研究分科会
    • 発表場所
      大阪大学(豊中市)
    • 年月日
      20140130-20140131
    • 招待講演
  • [学会発表] ストレスファイバーの構造と機能の理解を目指した成分解析2014

    • 著者名/発表者名
      松井翼、佐藤正明、出口真次
    • 学会等名
      第26回バイオエンジニアリング講演会
    • 発表場所
      東北大学(仙台市)
    • 年月日
      20140111-20140112
  • [学会発表] 力方向依存的なストレスファイバー脱重合のメカニズムに関する研究2014

    • 著者名/発表者名
      黄文敬、松井翼、佐藤正明、出口真次
    • 学会等名
      第26回バイオエンジニアリング講演会
    • 発表場所
      東北大学(仙台市)
    • 年月日
      20140111-20140112
  • [学会発表] 新しい細胞マイクロパターニング技術開発の取り組み2014

    • 著者名/発表者名
      横山奨、松井翼、出口真次
    • 学会等名
      第26回バイオエンジニアリング講演会
    • 発表場所
      東北大学(仙台市)
    • 年月日
      20140111-20140112
  • [学会発表] A new micropatterning for the study of cellular morphogenesis2014

    • 著者名/発表者名
      Deguchi, S., Matsui, T.S.
    • 学会等名
      2014 CMBE Conference
    • 発表場所
      米国、サンディエゴ、Hilton La Jolla
    • 年月日
      20140107-20140111
  • [学会発表] Subcellular localization of focal adhesion proteins are determined by traction stress-dependent positive regulation2013

    • 著者名/発表者名
      Deguchi, S., Matsui, T.S., Saito, A.C., Sato, M.
    • 学会等名
      7th Asian Pacific Conference on Biomechanics
    • 発表場所
      韓国、ソウル、Korea Institute of Science and Technology
    • 年月日
      20130829-20130831
  • [学会発表] Functional extraction of actin stress fibers for contractile force measurements in vitro2013

    • 著者名/発表者名
      Matsui, T.S., Sato, M., Deguchi, S.
    • 学会等名
      7th Asian Pacific Conference on Biomechanics
    • 発表場所
      韓国、ソウル、Korea Institute of Science and Technology
    • 年月日
      20130829-20130831
  • [学会発表] 細胞のマクロ形態とナノ構造の力学的制御2013

    • 著者名/発表者名
      出口真次、松井翼、斉藤明、佐藤正明
    • 学会等名
      第36回バイオレオロジー学会
    • 発表場所
      九州大学西新プラザ(福岡市)
    • 年月日
      20130606-20130608
  • [備考] 名古屋工業大学・出口研

    • URL

      http://mbl.web.nitech.ac.jp/index.html

  • [産業財産権] 接触物体が発生する力の計測方法およびこれを用いたスクリーニング方法2013

    • 発明者名
      出口真次、横山奨、松井翼
    • 権利者名
      名古屋工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2013-271755
    • 出願年月日
      2013-12-27

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi