研究課題
若手研究(A)
(1)細胞外環境モデルの構築と特性評価H24年度は、機能性高分子材料を用いて、軟組織と硬組織のメカニクスを模倣可能なインビトロモデルの構築を行った。前者については、光硬化性ゼラチンやアクリルアミドのハイドロゲルを用いてヤング率の厳密制御(E:0.1~100kPa)が可能なモデルを構築した。これらのモデルを用いて、がん細胞や筋芽細胞などを育成したところ、より硬いゲル上で細胞が大きく伸張する様子が観測され、細胞の力学応答を定量評価可能であることが確認された。また、後者の硬組織環境モデルについては、新規の無毒性疎水性ポリマーを用いて、ヤング率を0.1kPa~10MPaの範囲で制御可能な硬組織環境モデルを構築することに成功した。(2)細胞接着定量評価法の開発上記の外部環境モデル上での細胞接着を定量評価するために、レーザーによる細胞剥離法を立ち上げた。本手法では、パルスレーザーを液中に集光照射することよって発生した圧力波により細胞を基板から剥離する。圧力波はレーザー光強度や集光点からの距離により制御することができるので、細胞剥離に必要な力、つまり接着力を決定することが可能である。H24年度は、硬組織モデル上での骨肉種細胞の接着力を定量評価し、硬さの増加に対して接着力が単調増加することをも見出した。現在他の細胞系でも外部環境メカニクスに対する細胞接着力の系統的な評価を行っている。
2: おおむね順調に進展している
H24年度は、細胞応答を定量評価するための細胞外環境モデルの構築と評価を達成目標としていた。実際これまでに、ハイドロゲルや疎水性ポリマーを用いた軟・硬組織環境のモデルを構築することに成功した。さらに本モデルを用いて、レーザー衝撃波や光干渉法による細胞応答評価も既に始めている。よって本研究はおおむね予定通り進展していると言える。
今後も様々な機能性材料を用いて、生体内の様々な細胞外環境のモデルを作製し、生体内のような複雑環境下における細胞機能の制御機構を光定量計測により解明していきたいと考えている。そのための新しい細胞環境モデルとして、光硬化性のゲルを用いて空間軸で細胞外環境の硬さを制御することを試みている。
H24年度は、本研究期間全体を通して必要不可欠な原子間力顕微鏡を購入した。H25年度は、主に細胞機能の評価用の装置を購入する予定である。特にH24年度に新しい光干渉顕微法の足掛かりを得たため、H25年度には顕微鏡ユニットに500万円程度の予算を使用したいと考えている。その予算を捻出するためH24年度に消耗品の購入を抑えた結果,原子間力顕微鏡が全経費の90%以上を占めることとなった。しかしこのような背景の元、研究を発展させる上で必要不可欠であったと考えている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件)
Crystal Growth & Design
巻: 13 ページ: 1491-1496
10.1021/cg301618h
Chemical Physics Letters
巻: 555 ページ: 268-273
10.1016/j.cplett.2012.10.074
Journal of Physical Chemistry B
巻: 116 ページ: 8024-8030
10.1021/jp212385p
巻: 12 ページ: 4334-4339
10.1021/cg300018t
巻: 12 ページ: 2856-2863
10.1021/cg300025b