研究課題/領域番号 |
24680050
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
吉川 洋史 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50551173)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 細胞・組織 / 応用光学・量子光学 / バイオテクノロジー / 生物物理 / 界面科学 |
研究概要 |
本研究の目的は、細胞の生育環境、特に”硬さ”を自在に制御できるモデル基板を用いて、外部環境による細胞機能の制御機構を解明することにある。本年度は、これまでに開発したハイドロゲルによる細胞外環境モデル基板を用いて、細胞‐外部環境間接着の定量評価に取り組んだ。ここではまず、細胞とハイドロゲル間の物理接触を可視化するために、光干渉を用いた新規顕微観察法を開発した。これまで一般に、基板近傍の接着分子の可視化法として全反射蛍光顕微法が用いられてきたが、Z軸分解能が200 nm程度までに限られることから、細胞‐基板間の物理接触を検出することは不可能であった。一方、ガラス基板の場合は数nmのZ軸分解能を持つ反射干渉顕微鏡法(RICM)が有効であるが、ハイドロゲルの場合は溶液との界面の反射率が低く、像のコントラストが大きく低下するという問題があった。そこで本研究では、共焦点及びハイスループット光学系を導入した新規RICMシステムを構築した。その結果、細胞-ハイドロゲル間の接着領域を高コントラストにイメージングすることができた。実際本手法を用いて、がん細胞の接着面積・形状に対する外部環境硬さの影響について定量評価することに成功した。またレーザー圧力波法を用いて、筋芽細胞―ゼラチン間接着力の定量評価も行い、筋肉組織形成に最適な細胞‐ゲル間相互作用を見出すことにも成功した。これら成果はJournal of Physical Chemistryなどに原著論文として発表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度は、これまでに構築した細胞外環境モデルを用いて、細胞力学応答が定量計測可能であることを示すことを目標としていた。実際に、硬さの異なるゲル上での細胞接着を光学的手法により定量評価することに成功しており、本研究はおおむね予定通り進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も様々な機能性材料を用いて、生体内の様々な環境をin vitroでモデル化し、生体内複雑環境下における細胞機能の制御機構を光定量計測により解明していきたいと考えている。具体的には、肝臓や脳をはじめとする軟組織の硬さ環境を中心にモデル化し、細胞の力学応答(接着力・運動性・形状など)がどのように影響を受けるのかを定量的に追跡する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、細胞‐基板間接着を検出可能な光干渉イメージングシステムを新たに構築したが、その過程で光源のコヒーレンスや波長が干渉像のコントラストに大きな影響を与えることがわかった。そのため現在までに様々な光源のデモを行っているが、また最適光源の決定に至っておらず、次年度使用額が生じることとなった。また、H25年度はこのような細胞接着の評価に必要な装置開発に重きを置いたため、備品設備費が総支出額の90%以上を占めることになったが、本研究を遂行する上では必要不可欠であったと考えている。 上記理由から波長やコヒーレンスの異なる数種類のレーザー光源の購入を検討している。
|