研究課題
今年度は、これまでに構築した機能性のゲルや脂質膜などを用いて、生体内の様々な環境をin vitroでモデル化し、細胞の接着や運動と外部環境因子との定量相関を解明することを目的としていた。特に今年度は生体内の軟組織環境をターゲットとし、再生医学や界面科学の専門家と有機的に連携しつつ研究を進めた。まずハイデルベルグ大学Tanaka教授らとの共同研究として、脂質平面二重膜による細胞膜モデルを用いて、血中系細胞の接着力の定量評価に挑んだ。ここでは、流動性を有する脂質平面二重膜を動的な細胞膜のモデルとし、各種臓器由来の接着分子を膜表面に密度を制御しつつ修飾した。ここに赤血球や造血幹細胞など、各種血中系細胞を播種して接着力を測定したところ、接着力が接着分子密度に対して非線形に応答することを見出した。これは、血中細胞と外部環境との接着が協同的に作用することを示しており、血中細胞由来の各種疾病メカニズムに対する新たな知見となりうると考えている。本成果は2本の原著論文として報告した。また、横浜市立大学の武部准教授とは、肝臓の種となる肝芽形成と外部環境硬さとの相関解明に挑んだ。硬さ可変のゲル基板(ヤング率:0.1 kPa~100 kPa)を用いて、肝芽形成の初期過程である細胞集合体形成を調べたところ、中間程度の硬さで特異的に集合体形成が促進されることを見出した。この細胞集合体形成プロセスを、分子生物学的手法と画像解析により詳細に調べた結果、間葉系幹細胞の収縮力に由来する細胞-細胞間相互作用と、細胞-基板間相互作用(接着力)との力学的な競争過程により実現されることがわかった。また、このような力学的メカニズムを利用することで、他の臓器の種(器官原基)の形成に広く応用できることがわかった。本成果はCell Stem Cell誌に論文発表し、雑誌表紙(Front cover)に選ばれた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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