薬剤ナノ結晶点眼液による網膜疾患治療法の革新的研究開発において、第一にステロイドナノ結晶点眼液およびカルパイン阻害剤ナノ結晶点眼液の作製に成功した。ステロイドナノ結晶点眼液の開発においては、電子顕微鏡写真観察および粒度分布測定により、粒子サイズ200nm近傍のナノ結晶の作製に成功したことが明らかになった。点眼液のゼータ電位測定を行ったところ十数mVの負の帯電を示したことから、安定したナノ結晶分散系の作製に成功した。またナノ結晶点眼液に含有されるナノ結晶が結晶構造を有することを粉末X線構造解析により確認した。比較検討として、同様の結晶性および分散安定性を有する粒子サイズ10μm程度の懸濁(マイクロ結晶)点眼剤を作製し、ウサギを対象に点眼実験を行った。高速液体クロマトグラフィー解析の結果から、ナノ結晶点眼液はマイクロ結晶点眼液より、6倍程高い前房水薬剤移行性を有することが明らかとなった。角膜下にある前房水に高い濃度で薬剤を移行できる本技術は、後眼部への薬剤を移行させる可能性を高めるため、意義のある結果を得たと考えている。いくつかの国際学会(招待講演等)にて本研究関連の成果を発表した。また本研究成果を学術論文として発表予定である。本技術・研究課題をより発展させ将来的には臨床応用につなげるよう研究開発を続けてい行く予定である。また本結果を、カルパイン阻害剤ナノ結晶点眼液を用いた網膜変性マウスへの点眼による網膜変性の抑制の実証にもつなげていきたいと考える。
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