糖尿病治療の基本は、血糖値の測定であるにも関わらず、一般的な測定方法は観血的な方法である。しかし、非侵襲血糖値測定の実用的な手法は確立されておらず、近年では、さらに、連続的な血糖値測定に対する要望が高まりつつある。血糖値の連続的な測定を実現するためには、システムの低消費電力化、小型化が必須の課題である。 我々は、光音響分光法(Photoacoustic Spectroscopy; PAS)による非侵襲血糖値測定システムの開発を行っており、測定精度の向上を図ると共に、装置の小型化を進めている。光音響現象は、断続光を物質に照射すると光吸収により断続光の周波数と同じ周波数の音波が物質から発生する現象であり、発生する音波の強度が光吸収量に比例することから、濃度などを推定することが可能である。 PASの感度は、従来の分光法と異なり、検出器の容積に反比例することから、微小電気機械システム(MEMS)技術を応用して、容器内部の容積を可能な限り、縮小した検出器を試作した。これに取り付けて、血漿試料のような液体を測定するための溶液器を試作し、濃度の異なるグルコース水溶液に対するPA信号を測定した。各濃度に対するPA信号は、数時間経過後、定常状態を示す。また、定常状態の区間においては、グルコース水溶液の濃度に依存するPA信号を確認した。
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