研究課題/領域番号 |
24680061
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
田中 悟志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10545867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳機能操作 / 非侵襲脳機能計測 / 学習 / 記憶 / 脳卒中 / リハビリテーション / 経頭蓋直流電気刺激法 / 磁気刺激 |
研究概要 |
経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation: tDCS)は、脳活動を安全に修飾する新しい方法としてリハビリテーション医療への応用に期待が高まっている。しかしながら、その効果の射程や作用機序は明らかではない。本年度は運動学習を効果的に促進するための脳刺激法のパラメータの開発に関して研究を着手した。臨床において、自己身体に対する注意を促すことで訓練効果が向上することをしばしば経験する。これは、身体への注意の誘導が運動皮質興奮性を促進し、運動学習を促進するためだと考えられている。一方、tDCSは、頭蓋上に貼付した電極から微弱な直流電流を与えることで、簡便かつ非侵襲に運動皮質興奮性を促進する手法である。したがって、身体への注意とtDCSを組み合わせることで、運動学習をより効果的に促進できる可能性がある。本年度はその可能性について、まず運動学習と関連の深い生理学的指標である運動皮質興奮性をターゲットとして、健常者を対象とした実験により検討した。実験の結果、身体に対する注意と運動皮質へのtDCSを組み合わせることにより、それぞれ単独で行うよりも、より長期的に運動皮質興奮性を高めることが明らかになった。この促進効果の神経基盤としては、脳刺激によって生じた運動皮質細胞静止膜電位の脱分極状態が、注意による運動皮質細胞の発火頻度増加を更に促進したためと考えられる。したがって、身体への注意とtDCSの組み合わせは、運動学習をより効果的に促進できる可能性がある。今後は、身体への注意とtDCSを組み合わせることで、運動皮質興奮性の変化と共に、運動学習や運動遂行などにも促進的な効果があるかを検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者を対象とした実験により、従来の方法よりも長期的に運動皮質可塑性を誘導できる刺激パラメータを今年度は開発できた。長期的な可塑性誘導を可能にする刺激パラメータの開発は本研究課題を達成するための重要なステップであり、2年目で達成できた点は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度確立した長期的に運動皮質可塑性を誘導できる刺激パラメータをもとに、運動学習そのものを長期的に促進できるか、出来るのであればその持続時間はどの程度なのかを実験的に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究支援者雇用費で使用する予定であったが、研究協力者達の支援により研究支援者を雇用せずに予定通りの研究成果を得ることの見込みがたった。そのため使用しなかった。 初年度に購入予定であった磁気刺激装置の購入に使用する計画である。
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