経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)の効果の射程および神経系への影響に関して検討を行った.健常者を用いた実験では,身体に対する注意と運動野へのtDCSを組み合わせることにより(1)運動皮質可塑性の誘導ができること,(2)運動学習の促進効果が刺激から1か月後も持続することが確認された.脳卒中患者に対しても同様の刺激パラメータが促進効果を持つことが示されたが,その効果にはかなりの個人差が認められた.一方、神経系への効果に関しては,機能的MRI実験では,tDCSによる線条体活動への有意な効果は検出できなかった.よって「tDCSにより皮質‐線条体回路の活動が修飾される」という仮説は支持されなかった.
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