近年,ロボット技術を用いることで,車いすや歩行器などの福祉機器の高度化を目的とした研究開発や上肢・下肢のリハビリテーションを行う運動支援システム(ハプティックデバイス)の研究開発が盛んに行われている.一般に従来のロボット技術では,福祉機器やハプティックデバイスにサーボモータを取り付け,それらを能動的に駆動することで様々な機能を実現する.しかし,本研究では,福祉システムを常にパワーアシストで駆動させるようなアクティブ型システムを目指すのではなく,人間の力で動かされるパッシブ型福祉機器を基盤とし,回生ブレーキ制御にて危険回避などの多くの機能をブレーキ制御のみで実現するとともに,上り坂での支援などブレーキ制御では支援できない一部の状況でのみ回生されたエネルギーを用いて補助的な能動支援を行う運動制御手法の構築を目指す. 本年度は昨年度までに開発してきた回生ブレーキを用いた運動制御手法を適用した移動支援システムやリハビリテーション等に応用可能なハプティックデバイスの有効性を検証する評価実験を行った.実際に回生ブレーキによって制御される歩行支援機を企業と共同開発し,2015年7月より販売を開始した.また,別の企業との共同研究により,回生ブレーキ制御による足こぎ車いすの走行支援システムの商品化に向けた取り組みを進めている.ハプティックデバイスの評価に関しては,操作点を目標経路に追従させる実験を健常者によって行い,その経路追従性を定量的に評価した.これは今後の高齢者や障がい者による実験のための安全性の確認や評価項目の検討に大きく貢献した. 構築した制御アルゴリズムやそれを適用した人間支援システムの成果は,国内学会や国際学会で発表を行った.
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