研究課題/領域番号 |
24680064
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
島田 茂伸 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部地域技術支援部生活技術開発セクター, 主任研究員 (80377027)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アシスティブテクノロジ / 福祉工学 / ヒューマンインタフェース / 視覚障害者 / ハプティクス |
研究実績の概要 |
視覚障害者が使用する地図に触地図があるが、その実用に関しては、コンテンツの全体情報、コンテンツ全体の中での自己位置、自己位置における詳細情報をどのように提示するかが問題となる。本研究の基本的なアイディアは、平面上に置いたユーザの手腕位置は、ユーザの体性感覚(ハプティクス)から平面上のどこに位置しているかをラフに認識できるという仮説に立脚しており、この体勢感覚から触地図の実用問題にアプローチするものである。すなわち、触地図コンテンツを日本地図とした場合、触れているピンディスプレイには地図の詳細情報が凹凸で表示され、かつ、手腕とピンディスプレイとが一体となって動き、右上に動かしたときは北海道、左下に動かしたときは九州が表示されるシステムが装置としての開発目標である。このようなハプティクス型触覚デバイスの開発として、XYテーブルと先行的技術を有する直接操作型触覚ディスプレイを融合する開発に取り組んだ。前年度までの試作と基礎実験を踏まえた研究開発により、研究開発計画で想定したデバイスに到達している。 地図情報は従前の紙媒体では製作や変更の加工が難しく保管の物理的容積を要するが、本デバイスではデジタルの地図コンテンツをそのまま使用することでこの問題を解決している。さらに本デバイスに適した地図コンテンツの表示方法や操作方法について検討し実装を行った。 以上のシステム構想と開発過程について国際学会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハプティクス型触覚デバイスの開発として、前年度までの試作と基礎実験を踏まえて、ヒトの力で容易に動かすことができる50 N以下の外力で動くXYステージ、およびユーザの指先位置を推定する本研究の基盤技術を組込んだ直接操作型ピンディスプレイを組み合わせた開発を行った。XYステージの位置に応じてピンディスプレイの凹凸パターンが変化することが確認でき当初想定したデバイスが完成している。さらに本デバイスに適合した推定計算手法、およびそのキャリブレーション手法を開発し適用することで実用上十分な精度を有することを確認している。 地図コンテンツには日本の、5000分の1ベクトル地図データを用い、日本全体図から番地レベルまでシームレスに表示可能なソフトウェアの開発を行った。開発第一段階の視覚ディスプレイへの提示は良好ではあったものの、このままではピンディスプレイに表示することはできなかった。本デバイスへの送信データはパソコン画面の任意部分をキャプチャし2値化を施したものであるが、この2値化処理によって色相情報の喪失による線分欠落や、表示領域の齟齬による矛盾が生じたためである。2値化の問題には切り出す画像内の輝度をしきい値に設定するアルゴリズムに変更し、表示領域の矛盾にはピンディスプレイに出力する画像サイズを固定にすることで鮮明な表示へと解決した。その他、地図上のテキスト情報は積極的に音声化することや、操作の履歴の保存、操作ボタンのようなインタフェース配置の検討を行った。 実験参加者によるユーザビリティ評価が未実施であるが、来年度実施へと計画変更しており、その実験装置については開発は完了していることから、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置については研究開発計画で想定したデバイスに到達しており完了している。実験参加者によるユーザビリティ評価が未実施なことからこれを推進する。視覚に障害を持つ学生が勉学する筑波技術大学において、その所属学生と教育指導を行う教授に協力を要請し、本デバイスを用いた触地図探索タスクにおける完了時間計測とユーザビリティの聞取り調査を行う。従前のピンディスプレイでも同様のタスクを実施し、両者の比較から本デバイスの優位性とユーザビリティについて統計的に評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者実験が未実施のため。
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次年度使用額の使用計画 |
被験者実験を実施し被験者謝金として使用する。
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