視覚障害者に図表を伝達する機器にピンディスプレイがあるが、ピンディスプレイの提示面積を超えるコンテンツを利用した場合、問題が生ずる。なぜなら、コンテンツ全体の大域情報と、ピンディスプレイが提示する局所情報との位置関係が理解できないからである。ではコンテンツ全体をピンディスプレイの提示面積内に縮小提示すると局所情報はピンディスプレイの分解能以下になり認識できない。本研究では平面上に置いたユーザの手腕位置は、体性感覚から平面上のどこに位置しているかをラフに認識できるという仮説に立脚し、ピンディスプレイを平面上で移動可能な機構を考案しシステム化を行っている。これによりピンディスプレイの局所情報は指先で認識し、コンテンツ全体のその位置は手腕の体性感覚から認識することで上記問題を解決するものである。 ピンディスプレイを平面上で移動させる機構としてリニアモータのリニアガイド部分だけを二台使用し、X軸ステージの上にY軸ステージを直交に締結することでXY軸ステージを構成している。そこに入力機能を付与したインタラクティブ型ピンディスプレイを組合せてシステム化している。これはピンディスプレイをタッチパネル化したものであり、所謂タップやスライドの操作が可能である。これに音声を埋め込んだ地図コンテンツを利用することで、任意位置でタップすれば都道府県名が音声出力される。 以上をまとめ、ピンディスプレイを右上に移動させた時には北海道がピンの凹凸として詳細提示され、左下に移動した時には九州地方がピンの凹凸として詳細提示されるハプティクス型ピンディスプレイを構築した。ピンの凹凸で表現された北海道を触知しタップすることで“北海道”と音声出力されることから、初めて日本地図を触ったユーザにも地図上の都道府県の形とその位置、およびそれが何であるかが知れるシステムの構築をしている。
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