研究課題/領域番号 |
24680065
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏哉 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60412376)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 子ども / 被災地域 / 身体活動 / 健康 / ストレス / 免疫 / 運動環境 / 運動支援 |
研究実績の概要 |
我々は2011年9月から現在に至るまで女川町の小学4年生~中学3年生の全児童生徒を対象に運動量と健康状態の調査を実施してきた.調査は毎年3月頃に実施し,これまで合計5回の調査を実施した.その間,我々は女川へ足繁く通い,運動の習慣化を促すイベント,教育関係者を対象とした運動遊びの勉強会,業間休みや放課後を利用した運動遊び,日常の体育授業の補助などを実施した. 調査結果を中心に,その概要を示す.質問紙を用いて体育授業を除いた1週間の総運動時間を調査した結果について,1週間の総運動時間が60分未満の割合に注目すると,文部科学省による同様の調査結果では小中学生の男子で約10%,女子で約25~30%であるのに対して,女川町の児童生徒ではその割合が高い状態で推移していることが明らかとなった.特に女子においてその差が顕著であることが分かった.ただし,小学女子においてはわずかではあるが改善の兆しが伺える.唾液の採取によりストレス(コルチゾール)と免疫機能(唾液分泌量,SIgA濃度など)の測定を行った結果について,ストレス指標は震災半年後と1年後には変化がなかったが,2年後には有意な改善を示した.免疫機能については震災半年後と1年後の違いはほとんどなかったが,1週間の総運動時間の中央値をもとに高い群と低い群に分けて比較を行ったところ,1週間の総運動時間が高い群においてのみ有意な上昇が認められた.上昇が免疫機能の改善を必ずしも示しているとはいえないが,日常的に運動量が多いということが被災地の子どもの免疫機能に好影響を与えている可能性が示唆された. 本研究では調査結果をもとに,被災地域の児童生徒に対して運動環境改善の取り組みを実施した.具体的には,業間休みや放課後に支援スタッフを現地に派遣した.また,放課後に独自にバスを手配して,運動遊びの時間を延長する工夫も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実態調査と調査結果を踏まえた支援活動を目的としている.調査は計画通り,毎年実施されており,分析結果についても定期的に学会等で発表できている.支援活動については高頻度での指導者派遣を行う局面から児童生徒を支える学校自らが主導する局面へ転換できる素地をおおむね作ることができた. 一方,未分析のデータがあることや研究代表者の異動により現地支援活動の行い方を再検討する必要があることなど課題も残っている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は,これまでの支援活動のノウハウ移転とそれらノウハウ及び調査結果から明らかになった被災地域の問題についてまとめ,それを公表することに主眼がある.幸い,研究フィールドである女川町の教育委員会が組織した女川の教育を考える会の特別委員を拝命したので,現地教育関係者との連携は強化された.この連携を有効活用することで研究は推進されると考える.
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