研究課題
本研究の目的は,人間が狭い空間を通り抜ける行動(隙間通過行動)に着目して,歩行中に身体と環境の空間関係が知覚され,その関係に基づき体幹を回旋するなど,歩行が調節されるプロセスについて明らかにすることにある。本年度は「遠方で得られた視覚情報だけで,どこまで正確に隙間通過行動が遂行できるのか」について検討した。隙間の3m前方で視覚情報を遮断しても,正確に隙間を通過できるかについて,若齢健常者12名を対象として実験を行った結果,以下の点が明らかとなった。1.3m前方で視覚情報を遮断することで,隙間を形作るドアとの接触率は確かに向上した。しかし,過半数の試行においては視覚情報を遮断しても接触を回避できたことから,3m前方までの視覚情報だけでも,接触回避自体はある程度可能であると言える。2.隙間幅が身体幅と等しい場合(つまり,接触回避のために体幹回旋が必要かどうかの判断が難しい場合),12名中4名が,視覚が遮断された条件において体幹回旋をせずに通過しようとした。この結果は,遠方の視覚情報だけでは,接触回避に必要なスペースが過小評価される場合があることを示唆する。3.隙間が身体幅に対して十分に広い場合でも,接触するケースが散見された。これらの条件では,歩行軌道が左右のいずれかに偏倚した。よって視覚情報のない状況では,直線歩行の維持が困難になると言える。4.視覚を遮断する直前に,歩くことができること(動的視覚情報を得られること)の影響を検討した結果,歩行速度の維持や安定した位置での体幹回旋の開始には寄与したものの,体幹回旋角度の選択の正確性には寄与しなかった。この結果から,遠方における体幹回旋角度の計算において,歩行中に得られる動的視覚情報が利用されることはないと考えられた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Journal of Motor Behavior
巻: in press ページ: in press
Frontiers in Psychology
巻: 6 ページ: 1509 (12 pages)
10.7600/jpfsm.4.31., 2015
Experimental Brain Research
巻: 233 ページ: 797-807
10.1007/s00221-014-4155-y, 2015
Journal of Physical Fitness and Sports Medicine
巻: 4 ページ: 31-41
理学療法
巻: 32 ページ: 780-788
臨床スポーツ医学
巻: 32 ページ: 1146-1150
バイオメカニクス研究
巻: 19 ページ: 144-149
http://www.comp.tmu.ac.jp/locomotion-lab/higuchi/higu-index.html