これまでの研究によって、最大酸素摂取量60ml/min/kg前後の有酸素能力を持つ若年者では、器官・組織のエネルギー代謝率は恒常的に増加しないことが示唆された(この研究内容は平成27年度にNutrientsにアクセプト済み)。また、我々の先行研究において、「スポーツ選手は除脂肪量の蓄積にともなって、肝臓・腎臓重量も比例的に増加している可能性があること」や「スポーツ選手の大きな基礎代謝量には骨格筋(13kcal/kg/day)だけでなく、高い安静時のエネルギー代謝率を示す肝臓(200kcal/kg/day)および腎臓重量(440kcal/kg/day)が影響している可能性があること」が示唆されている。これら研究結果を踏まえると、運動トレーニングに伴い基礎代謝量が変化した場合には、器官・組織のエネルギー代謝率(kcal/kg/day)ではなく、重量(kg)が大きく関連していることが推察される。 この仮説を検証するため、当該年度においても、運動トレーニングによって身体組成が大きく変化する大学相撲部員を対象に測定・分析を実施した。縦断的データを7名追加し、これまで21名の横断的データ、そして18名の縦断的なデータ(身体計測値、血液検査値、DXA・MRIによる身体組成データ、睡眠時エネルギー代謝量)を得た。現在、運動トレーニング後の測定が未実施の対象者がおり、主要な目的である「運動トレーニングによって骨格筋量とともに内臓臓器重量は増加するのか、また、その身体組成の変化の影響によって基礎代謝量は上昇するのか」については検討ができていないが、測定終了後早い段階で論文作成に移行していく予定である。 加えて、本研究に付随して、器官・組織レベルで身体組成を評価するために、DXA法による全身および部位別の骨格筋量推定式を作成した(この研究内容は本年度にEuropean Journal of Clinical Nutritionにアクセプト済み)。
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