研究課題
若手研究(A)
本年度は、Elov16欠損マウスの行動解析、脳の組織学、細胞生物学、分子生物学的解析を行い、Elov16欠損による神経機能具常の実態を明らかにすることを目標とした。Elov16欠損マウスではモリス水迷路およびステップスルー試験における空間記憶・学習機能の障害、オープンフィールドテストおよび高架式十字迷路における不安の亢進、回転棒試験における運動協調性の障害を観察した。統合失調症の評価法であるプレパルス阻害試験では、驚愕反応の抑制はElov16欠損マウスでも野生型マウスと同様に起こったため、このマウスは統合失調症の表現型は有していないと考えられる。また、組織学的解析により、Elov16欠損マウスの海馬では神経新生の減少やアストロサイトの増加が観察された。Elov16欠損マウスの脳のトランスクリプトーム解析を行い、脳機能に重要であり、Elov16欠損マウスの脳で低下しているシグナル伝達経路と脂肪酸代謝経路の候補を見出すことが出来た。さらに、Elov16 floxedマウスとNestin-CreTgマウスを交配し、脳特具的E16v16欠損マウスの作製に成功した。脳特異的Elov16欠損マウスでは、Elov16欠損マウスと同様に脳重量の増加が認められた。本年度の研究成果から、脂肪酸伸長酵素Elov16は脳の発達および機能に重要な役割を担っており、特に海馬において重要な機能を持つこと、また脳におけるElov16の機能は他の組織では補完できず、脳独自の脂肪酸代謝および脂肪酸組成制御がその機能発現に必須であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究は予定通り進み、期待した成果も出ているため。
神経初代培養や脂質プロファイルの解析を行い、Elov16欠損マウスの脳における機能異常の分子メカニズムを明らかにする。また、中枢神経特異的Elov16欠損マウスおよび時期特異的Elov16欠損マウスを用い、Elov16の脳やその発達ステージにおける特異的な機能を明らかにする。
すべて 2012 その他
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Hepatology.
巻: 56(6) ページ: 2199-2208
10.1002/hep.25932.
http://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/