研究課題
脂肪酸は生体にとって必要不可欠な栄養素であり、あらゆる生命現象に関与する。代表者は脂肪酸伸長酵素Elovl6が脳で高発現し、Elovl6欠損マウスでは脳重量の増加、記憶・学習障害、不安・恐怖の亢進、運動協調性の低下、意欲の低下など、高次脳機能に異常が認められることを見出した。すなわち、Elovl6は中枢神経系の形成や機能維持、精神疾患の発症に重要と考えられる。本研究では、Elovl6欠損マウスを用いて、脳におけるElovl6の生理的・病態生理的役割や、Elovl6を介した細胞内脂肪酸組成制御の重要性およびその分子機構を解明し、健やかな脳の発生・発達・維持や精神・神経疾患の予防や治療に資する知見を得ることを目標とする。本年度は、Elovl6欠損マウスの脳の脂質メタボローム解析、初代培養による神経機能の解析、中枢神経特異的Elovl6欠損マウスの解析を行い、脳の発達や高次脳機能におけるElovl6の役割を明らかにすることを目的とした。脂質メタボローム解析の結果から、Elovl6欠損マウスの脳では、特にリン脂質の構成脂肪酸分子種にElovl6活性の欠損にともなう大きな変化が認められた。また、海馬の初代培養により、Elovl6がアストロサイトの機能変化を介して神経の機能や成熟に影響をおよぼしている可能性を見出した。脳特異的Elovl6欠損マウスは、Elovl6欠損マウスと同様に脳重量の増加やスパイン数の減少を認めたが、Elovl6欠損マウスとは異なる行動異常のパターンを示した。したがって、Elovl6欠損マウスの行動異常には、脳内の機能異常に加えて、末梢組織や内分泌系の異常が関与する可能性が考えられる。
3: やや遅れている
研究は予定通り進んでいるが、Elovl6欠損が脳機能に与える影響が予想以上に広範で重要であり、解析事項が増えているため。
初代培養細胞のメタボローム、マイクロアレイ解析を行い、Elovl6欠損マウスの脳における機能異常の分子メカニズムを明らかにする。また、中枢神経特異的Elovl6欠損マウスおよび時期特異的Elovl6欠損マウスを用い、Elovl6の脳やその発達ステージにおける特異的な機能を明らかにする。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
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