本研究では、肥満や糖尿病などのメタボリック症候群様症状を示す生活習慣病において近年重要視されている慢性的な軽度の炎症レベルを評価できる起炎症性分子の探索・同定・機能解析を行う。特に、腸内細菌叢と生体との相互作用がメタボリック症候群の表現系を決定する大きな因子であることが明らかになりつつあるので、腸管内容物、粘膜組織、糞便中に含まれる化合物の分析を行い、血中の炎症性サイトカイン等のバイオマーカーよりも早期に且つ正確に、また非侵襲的に評価できるメタボリック症候群の新規診断法の開発を目的とした起炎症性分子の探索的基盤研究を行う。 昨年度までに、ob/obマウスおよび対照のC57BL/6Jマウスの糞便抽出物の起炎症性試験(NF-kBレポーターアッセイ)で、ob/obマウスの糞便水溶性画分が顕著な活性を示すことを見出し、その原因分子の一つとしてヘム代謝産物を同定した。 本年度は、通常食あるいは高脂肪食を摂取させたKK-AyマウスあるいはC57BL/6Jマウス(計4群)の糞便に含まれる可溶性の有機化合物のLC-MS分析を行った。その結果、昨年度までに行ったob/obマウスおよび対照のC57BL/6Jマウスの糞便抽出物の分析と同様に、ヘム代謝物が各群を特徴付ける化合物の一つとして同定された。同定した化合物を、C57BL/6Jマウスへ8週間飲水投与したところ、糖質代謝異常および脂質代謝異常を示す可能性が示唆された。現在その詳細なメカニズムを解析している。
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