研究概要 |
人物頭部に装着した小型カメラを用いて体験活動を個人視点映像として記録し,その映像の振り返りを支援する基礎技術に関する研究を行った.具体的な検討内容は以下の通りである. 注視行動の要約画像作成:体験における重要なイベントは人と人および人とモノのインタラクションである.中でも注視行動は対象が人.モノどちらにもなり得るため,振り返るべき体験として大きな意味を持つ.そこで数十秒から数分間の個人視点映像から注視行動に関する一枚の要約画像を生成する手法について検討を行った.個人視点映像からはカメラ運動として注視行動を取り出せる上に,そのときのシーンの様子も同時に記録している.提案する要約画像はその特性を利用し,個人視点映像を貼り合わせたパノラマ画像上に注視時間や注視の遷移を直感的に提示する。 共同注視状況の可視化:複数参加者の個人視点映像を並べて閲覧したとしてそれらの共同注視を正しく理解・分析することは簡単ではない.なぜなら複数人物の位置関係や注視対象を同時にかつ瞬時に把握することは難しいからである.我々は,個人視点映像からその人物の視線情報を推定し,それらを特定の人物の個人視点映像中に重畳提示するビューを設計・提案した.提案ビューを通すことで,ガイド行動に対して被説明者がどのように注目しているかを容易に理解できることが確認された. 再フレーミングによる映像補正:その特性上,個人視点映像は激しい揺れを含んでいることが多く,そのまま閲覧するとすぐに酔ってしまう,内容を理解する前に視野が切り替わってしまう,といった問題がある.それを解決する一手法として,映像を時空間的に補間して再フレーミングすることで,内容理解を支援するような映像に補正する技術について検討を行った.また再フレーミングの対象は視聴目的依存であるため,視聴時にそれを簡単に制御できるインタフェースについても試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では体験活動をマルチモーダルに記録するデバイスの開発を行う予定であったが,それに先んずる形でこれまでに取得した集合的個人視点映像を用いた技術開発を行った.実質的には研究開発の順序が入れ替わった形だが,マルチモーダル記録を利用しない条件下で検討を進めたため,当初の研究計画よりも多少遅れていると思われる.
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