大学の授業において、学生は授業中、何をしているのだろうか。学生は「授業を聞き、必要に応じてノートを取り、授業を理解しようとしている」と多くの教員は仮定している。しかし多くの場合、これは経験的な理解に過ぎない。実際の学生の行動を授業内で把握するのは容易ではなく、とりわけ大教室の授業では教員の主観に頼るしかなかった。 本研究では、学生が授業の「何を見ているのか」の行動に関わる情報と、「何を書いているのか」「何を疑問に思っているのか」の思考プロセスに関わる情報をセンサーやソーシャルメディアにより取得し、教員や学生にフィードバックするシステムを構築した。 具体的には、学生に過度に負担をかけずに状況を把握するツールとして、アイトラッキング(視線解析)やデジタルペン、ウェアラブルカメラ等の活用を図った。また、学生の能動的な情報発信を促すツールとしてソーシャルメディアのTwitterを授業内で活用し、学生からの質問や意見の把握を行った。本研究では、これらを組み合わせながら、学生の学習状況をリアルタイムで教員や学生にフィードバックするシステムを開発し運用した。 成果としては、第一に、アイトラッキング及びデジタルペンを用いて定量・定性的に学生の受講行動を計測・フィードバックが可能なシステムを構築し、授業規模が異なる授業で検証を行った点が挙げられる。結果として、演習課題や授業内容の難易度と学生の行動の関係を明らかにすることができた。第二の、ソーシャルメディアの利用に関しては、学生の投稿内容をアーカイブしつつ、分析可能なシステムを構築した。投稿データの分析の結果、学生は多くの場合、授業に関連する投稿を行っていること、また、授業中のソーシャルメディア活用には、学生側にも一定のスキルが必要なことなどを明らかにした。
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