研究課題/領域番号 |
24680082
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
杉岡 奈穂子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助手 (00609167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 唐桟 / 透過電子顕微鏡 / クロムイエロー / 更紗 / プルシアンブルー / 木綿 |
研究概要 |
本研究では,クロムイエローを基軸とした東西の文化交流の発展を広く明らかにすることを目的としており,透過電子顕微鏡等の先端的分析法で物質情報を蓄積する。本年度は,試料作製法および観察法を確立とあわせて以下の研究を行った。 (1) ヨーロッパにおける染色技法とわが国への技術移転後の染色技法を比較して,技法および染色に用いる原料の差の有無を明らかにした。19世紀初頭に開発されたクロムイエローに加えて,同時代に新しい青色として流行したプルシアンブルーで染色されているヨーロッパ更紗の染色剤の繊維内部での微細構造を観察した。プルシアンブルーは熱に弱いので,試料作製方法の検討が必要であった。プルシアンブルーで染められたと考えられる,青色を用いた更紗布について,これまで染色剤を同定することができなかったが,FT-IRおよび微小部X線回折装置を用いて分析することにより,プルシアンブルーが使用されていることが明らかになった。 (2) 木綿の品種の違いによるPbCrO4染色剤の分布の違いを解明した。唐桟の繊維断面をFE-SEMで観察すると,繊維内部へ染色剤の分布が確認された。しかしながら,一部には繊維内部での析出物が観察されないものも存在することが明らかになり,染色剤が繊維の周囲に観察されるのみであった。これらの試料を,さらにTEMを用いて観察も行ったが,析出物が確認されないものもみられた。この理由に関しては,品種の違いに加えて,染織技法の変遷を表すものとも考えられ,引き続き検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨーロッパ更紗にプルシアンブルーが用いられていることを明らかにし,さらにその微細構造や染織技法も解明しつつある。また,クロムイエローで染められている唐桟布に関しても,染織技法の変遷を表すデータが得られており,引き続き検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
微細構造観察に加え,XPSによる結合エネルギーの状態,走査型プローブ顕微鏡(SPM)によるナノ領域の物性測定等などの観察手法をさらに発展させて,幅広く適用できるように推進する。また,単繊維強度測定を行い,繊維の物性評価にも着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外での調査研究が行えなかったため,外国旅費の申請額と差異が生じた。 本年度は,海外での調査研究を含め国際学会等を積極的に行う予定である。
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