研究課題/領域番号 |
24680085
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (10509417)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | キノコ / DNA / 標本 / 分布 / 種同定 |
研究概要 |
世界的に広く分布する種がキノコでは多数知られている。しかし多くの場合それは同じ「名前」が使われているだけで、実際には全く異なる種を扱っているのではないだろうか?申請者は、未知種に対して、博物館が収蔵しているキノコ標本が少なすぎることが問題の一つと考え、日本および周辺地域で集中的に標本採集を行い、DNAデータとともに資料の充実を図る。それらをもとに、「同種」とされているキノコが本当に同じ種であるのか、全くの別種であるのかを明らかにすることで、キノコの分布域を推定する。そしてこれらの情報を他博物館・標本庫と共有することで、博物館資料(キノコ標本とそれに付随するデータ)の質向上を目的とする。 平成25年度は、共通種を洗い出すために、ニュージーランドと日本のチェックリストを比較し、前年度に抜き出し済みのオーストラリア・日本間の共通種と対照することで対象種を選定した。また、現地調査にむけて、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、中国の研究協力者と協議をすすめ、平成26年度以降の調査の具体案を作成した。 野外調査は日本各地およびニュージーランドで行った。国内の主な調査地は小笠原諸島、沖縄諸島沖縄島、南西諸島石垣島、宮古諸島宮古島・多良間島・伊良部島、奄美大島、屋久島、種子島、富士山周辺地域、日光周辺地域、福島県、広島県、および週1回のペースでの重点調査地として茨城県つくば市の筑波実験植物園である。これらの調査の結果、当初目標の3000点を上回る約3500点の標本を得た。 DNA解析においては、上記約3500点の全点からDNAを抽出し、菌類の正式なバーコード領域である核ITS領域の塩基配列を決定済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標本点数は当初目標の年3000点を上回るペースで得ることができている。また、得られた標本の全点において、新鮮な状態の写真撮影、組織片のバッファー保存、DNA抽出、およびバーコード領域のシーケンスを済ませている。以上については、当初の計画以上に進展していると言える。ただし、調査目的地のうちオーストラリアと台湾における調査が未定となっており、早急に計画に組み入れる必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた海外調査のうち、オーストラリアおよび台湾での調査を実行できなかったが、平成26・27年度は毎年1回以上の海外調査を、現地の研究協力者と連絡をとりあい可能にする。平成26年度はニュージーランドおよび中国、平成27年度はオーストラリア、韓国、台湾での調査を予定している。国内調査は前年度に引き続き、日本各地で行う。国内・国外あわせて年間3000点の標本を確保し、その全点の写真撮影、DNA抽出、およびバーコード領域の塩基配列を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験業務補助としてポスドクもしくは非常勤職員を雇用予定であったが、適任者が見つからず、人件費の執行が予定より大幅に減った。また、南半球を中心とする海外調査を長期間行う予定であったが、現地共同研究者との調整に難航し、翌年度以降の調査に変更するなどした結果、旅費は当初予定額よりも大幅に減った。その他、実験室で使用する試薬類を市販キットを使用していたが、実験室で自ら調整するなどした結果、大幅なコストカットが可能となったことから、物品費(特に試薬類)は今後も削減できると考えている。以上より、次年度使用額が生じている。 平成26年度は、年度初めからニュージーランド、その後中国、タイなどの海外調査を予定しており、既に現地共同研究者との調整は順調に進んでいる。その他、国内でも小笠原諸島、南西諸島をはじめとする遠隔地の他、本州各地における長期の野外調査を予定している。そのため、旅費の支出額については昨年度よりも大幅に増加することを見込んでいる。また、人件費についても、実験補助として新たに雇用を予定しており、これにより昨年度よりも大幅に支出が増えることを想定している。以上より、平成26年度から平成27年度への基金分繰越額は大幅に減少することを見込んでいる。
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