研究課題
世界的に広く分布する種がキノコでは多数知られている。しかし多くの場合それは同じ「名前」が使われているだけで、実際には全く異なる種を扱っているのではないだろうか?申請者は、未知種に対して、博物館が収蔵しているキノコ標本が少なすぎることが問題の一つと考え、日本および周辺地域で集中的に標本採集を行い、DNAデータとともに資料の充実を図る。それらをもとに、「同種」とされているキノコが本当に同じ種であるのか、全くの別種であるのかを明らかにすることで、キノコの分布域を推定する。そしてこれらの情報を他博物館・標本庫と共有することで、博物館資料(キノコ標本とそれに付随するデータ)の質向上を目的とする。平成26年度は、前年度までに作成した潜在的共通種のリストを基に対象種を絞り込んだうえで野外調査および世界各地の標本庫における対象種の探索を行った。野外調査は日本各地および海外(ニュージーランド、中国雲南省および吉林省)で行った。国内の主な調査地は小笠原諸島(父島・母島)、沖縄諸島沖縄島、宮古諸島宮古島・多良間島・伊良部島、富士山周辺地域、宮城県、山形県、および週1回のペースでの重点調査地として茨城県つくば市の筑波実験植物園である。これらの調査の結果、当初目標の3000点を上回る約3200点の標本を得た。全ての標本は写真撮影を経て、国立科学博物館植物研究部の菌類標本庫に収蔵済みである。また、DNA解析においては、上記約3200点の全点からDNAを抽出し、菌類の正式なバーコード領域である核ITS領域の塩基配列を決定済みである。以上の研究成果は日本菌学会年次大会(小松)、ニュージーランド菌類フォーレ、国際菌学会(タイ)、日本植物分類学会年次大会などの各種学会において2件の招待講演を含む発表を行った他、原著論文として報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
標本点数は当初目標の年3000点を上回るペースで得ることができている。また、得られた標本の全点において、新鮮な状態の写真撮影、組織片のバッファー保存、DNA抽出、およびバーコード領域のシーケンスを済ませている。以上については、当初の計画以上に進展していると言える。ただし、調査目的地のうちオーストラリアと台湾における調査が不足しており、早急に計画に組み入れる必要があるため。
当初予定していた海外調査のうち、オーストラリアおよび台湾での調査を実行できなかったが、平成27年度は毎年1回以上の海外調査もしくは共同研究者を通じての標本の確保を可能にする。本年度は中国雲南省における追加調査を予定している他、台湾、韓国、オーストラリア各国からの標本およびそれらからのデータを充実させる。国内調査は前年度に引き続き、日本各地で行う。国内・国外あわせて年間3000点の標本を確保し、その全点の写真撮影、DNA抽出、およびバーコード領域の塩基配列を決定する。今年度得られるデータと前年度までのデータを全て解析に用い、対象地域の全てもしくはその大半から得られた種群について、DNAバーコードデータを基に系統地理解析を行う。これにより大陸間をまたいで記録されている種の同一性を明らかにする。
当初予定していたオーストラリアおよび台湾への調査ができなくなったことにともない、旅費と消耗品に不使用分が生じたため。また、人件費についても非常勤職員の休暇増などに伴い、当初見込み額よりも少額となった。
本年度はプロジェクト最終年度にあたるため、最終的なデータ処理等に前年度よりも多くの人件費および物品費が生じる。それらに支出するため、請求額は無理なく適切に執行できる見込みである。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 7件) 図書 (4件) 備考 (2件)
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