H27年度は,ベトナムMui Ne砂丘,鳥取県弓ヶ浜半島,青森県屏風山砂丘での現地調査と採取堆積物試料の年代測定を行い,成果のまとめと発表を行った.6月には弓ヶ浜と屏風山の調査を行った.弓ヶ浜では8箇所のオーガーボーリングを行った.H25年に取得した試料と合わせ,新たに長石IR50法およびpIRIR法を適用した所,当地域の長石のIR50特性が年代測定に適さず,pIRIR法が有効なことが明らかになった.pIRIR法の結果により,砂丘列平野の発達は,近世以前はほぼ一定の速度で,中国山地でのたたら製鉄が盛んになった過去500年間のみ,土砂供給の急増による急拡大が見られることが明らかになった.この急拡大には土砂性質の急変も伴うため,鳥取砂丘で見られる過去500年間の砂丘活動の活発化は人間活動よりも気候変動を反映しる可能性が高いことが示唆される.屏風山では,H25年度の調査を補足し砂丘堆積物の精密な柱状図と,C-14,OSL年代試料を採取した.両年代測定の結果は整合し,10~11世紀頃の砂丘活動期,15~16世紀頃の非活動期,それ以降の活動期という,鳥取砂丘での復元結果とよく一致した.9月のMui Neでの調査では,冬季の最後に行ったH25年の調査を補足し,風向きが反対の夏期の砂丘地形を観察した.その結果,地中レーダ断面には,より冬季モンスーンの作用が主に記録され,風向きの逆転は再移動面に反映されることが明らかになった.7~8月は海外の研究者を招聘してとりまとめの協議を行い,名古屋でのINQUAで研究発表を行った.弓ヶ浜の成果は11月にアデレードのAPLEDで発表し,論文をとりまとめて国際学術誌Geochronometriaに投稿した.さらに,鳥取砂丘での過去1000年間の風成活動に関する成果の論文がQuaternary Internationalで受理され,3月に出版された.
|