本研究課題では、腸管上皮細胞に特異的に発現するホメオボックス転写因子CDX2が転写活性を介した機能と、転写活性を介さない機能(オートファジーの活性化)の二つの異なる機能により細胞周期のG1期-S期移行と、細胞生存を負に制御することが明らかにした。そこで、その機序解析を進めたところ、CDX2がオートファジーの必須酵素であるATG7に直接に結合することでオートファジーを活性化することや、オートファジーの活性化を介して細胞内の活性酸素の産生を促進することが分かった。活性酸素の発生を抑制すると、CDX2による大腸癌細胞の生存の抑制が解除されることから、CDX2は、オートファジーの活性化による活性酸素の産生を介して、大腸癌細胞の増殖と生存を抑制していることが明らかになった。興味深いことに、CDX2は転写機能を介して、活性酸素量の低下させる遺伝子の発現を抑制することで、活性酸素の調節を行っていることも分かった。また、CDX2は、活性酸素の産生を介して、細胞内エネルギー産生を抑制していることなども分かった。以上のCDX2による大腸癌細胞株の増殖生存抑制機能は、大腸癌細胞株を浮遊状態にしたときにより顕著になることから、CDX2は大腸癌細胞株の転移過程における生存を強く抑制していると思われる。また、この結果と一致する、個体レベルの実験結果が得られた。今後の引き続きの研究により、大腸癌細胞の転移過程における細胞生存を抑制するための標的などの解明を進める。
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