研究実績の概要 |
次世代が抗がん剤の開発に向けて、本研究では我々のグループで独自に同定した難治性乳がんの創薬ターゲットであるEphA10を標的に、新規二重特異性抗体(taFv型BsAb)の創製と特性評価を通じて、乳がん移植モデルに対するBsAbのPOCの取得を目指した。taFvは、scFvと比較し分子量が大きいことから、哺乳類発現系による調製を試みた。その結果、精製度の高い4種類のtaFv型BsAb (EphA10/CD3, His/CD3)の調製に成功した。興味深いことに、調製したtaFv型BsAbは、いずれもmonomerに加えdimerを形成することが判明した。。 そこで次に、多量体化による物性の向上がBsAbの高機能化に繋がる可能性を考慮して、monomerならびにdimerの機能について比較検討を試みた。フローサイトメトリーにより両抗原に対する結合活性を評価した結果、今回調製したBsAbの多くは、適切な結合活性が保持されていることが示されたものの、一部のBsAbに関しては、結合活性がみられないケースも生じた。一方、in vitroにおける細胞傷害活性を比較した結果、monomerと比較してdimerはより強力な傷害活性を発揮することが分かり、多量体化がBsAbの活性向上に繋がる可能性が示された。そこで、このtaFv (EphA10*/CD3) dimerをゼノグラフトモデルマウスに投与することで、in vivoにおける抗腫瘍活性を検討した。その結果、taFv dimerは、in vivoにおいても優れた抗腫瘍効果を発揮できることが示され、分子量が150 kDaの野生型IgG抗体医薬と同程度の抗腫瘍効果を示した。これらの結果から、調製したtaFv型BsAb (EphA10/CD3)は、in vitro, in vivoにおいて優れた抗腫瘍活性を発揮できることが明らかになった。
|