研究概要 |
2012年9月4日から10月17日にJAMSTECみらいのMR12_EO3航海に参加して、北西太平洋~北極海で海洋観測を実施した。ルーチン項目(栄養塩類、溶存酸素など)に加えて、大気と海水中のモノハロメタン及びイソプレンの濃度を測定した。北極海では、表面海水中のヨードメタンとイソプレンの濃度の相関が高かった(R=0.92)。陸上植物については光合成時にイソプレンが放出されることが知られており、海洋植物プランクトンも光合成時にイソプレンを放出することが推測される。したがって、北極海の海洋表面水中のヨードメタンも光合成時に放出されることが考えられた。この結果は、従来研究で述べられているように、植物プランクトンがヨードメタンを直接放出する説を支持する。また、当海域のヨードメタン濃度は0.7~2pmol/Lと他海域(熱帯~亜熱帯~亜寒帯=1~10pmol/L)に比べてかなり低いのが特徴である。鉛直方向のヨードメタン分布をみると、太陽光が十分届かず有機物の分解が卓越する層(低クロロフィル、貧酸素、高アンモニア)でもヨードメタンの濃度極大が見られた。室内培養系の従来研究によると、バクテリアによるヨードメタンの生成が示されている。本研究の結果は、モノハロメタンの生成には、植物プランクトンによる光合成とバクテリアによる有機物分解の両方が関係していることを示唆する。さらに、海洋におけるモノハロメタン動態の季節変化を捉えるため、2012年4,6,8,10,12月,2013年2月に北海道噴火湾にて海洋観測を実施した(北海道大学水産学部練習船うしお丸を利用)。海水中のヨードメタン濃度は12月に最低、2月から4月にかけて徐々に上昇、6~8月に最高を記録した。噴火湾では2~4月に植物プランクトンの大増殖が起こり、4月以降は有機物の分解が進行する。噴火湾でも、光合成と有機物分解の両方がヨードメタンの生成に関与していると考えられた。
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