研究課題/領域番号 |
24681001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大木 淳之 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (70450252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハロカーボン / 有機物分解 / 植物プランクトン / ヨウ素 |
研究実績の概要 |
黒潮-親潮混合域に設定した観測ライン(水産総合研究センター:Aライン)にて2014年5, 7,10月、2015年1, 3月に海洋観測を実施した。海水中の有機ガス成分を抽出してガスクロマトグラフ質量分析計で有機ヨウ素ガスの濃度を定量した。表層海水中のヨードメタンの濃度は5月から7月にかけて10倍以上にも増加することが捉えられた。植物プランクトンのブルームは5月中旬には終了することが多いので、ブルームで生産された有機物分解に伴ってヨードメタンが生成される可能性が考えられた。5月にはヨードメタンの高濃度場所はスポット的に点在していたのに対して、7月と10月は高濃度域が広範囲に分布していた。5月初旬の時点では、有機物の供給が少なくヨードメタンがまだ蓄積されていなかったエリアでも、7月になれば有機物の供給とヨードメタンの蓄積が広範囲に(ある程度一様に)及ぶことが考えられた。 2013年6~7月に北極海のチャクチ海陸棚域で観測したデータを解析したところ、陸棚直上の底層水でヨードメタンが高濃度になる現象が捉えられた。底層水には有機物分解にともなって栄養塩が蓄積されている。有機物が分解して初めに放出される窒素化合物のアンモニアとヨードメタンの濃度の相関を調べたところ、高い相関(R=0.78)があることがわかった。 既存研究により、亜寒帯域の珪藻類に由来する有機物を濃縮して暗所で保管すると、有機物分解にともないヨードメタンが発生することが確認されている。黒潮―親潮混合域や北極海陸棚直上水でヨードメタンが高濃度になったのは、珪藻類などに由来する有機物が分解するのと同期してヨードメタンが生成・蓄積されたものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道噴火湾での時系列観測に加え、黒潮-親潮混合域での時系列観測を実施することができた。海洋のモノハロメタン分布を時系列で観測した研究事例はほとんどなく、本研究により沿岸域と外洋域の両方で時系列観測が成功した点で、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
時系列観測を継続するとともに、2014年度までに得られた時系列観測の結果と培養実験の結果を照合して、海洋におけるモノハロメタン動態を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
海水試料の分析の一部が当該年度中に終わらなかったため、その分析を次年度に持ち越すため。
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次年度使用額の使用計画 |
海水試料の分析に要する物品(純窒素、試薬、標準物質)を購入する。
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