研究課題
大気中の有機ハロゲン化合物(ハロカーボン)は光化学反応によりオゾンを触媒的に破壊する働きがある。成層圏に到達する長寿命のハロカーボンには人為起源のフロン類と自然起源のモノハロメタン(メタンの水素原子1個がハロゲンに置換したクロロメタン、ブロモメタン、ヨードメタン)がある。海洋はモノハロメタンの重要な発生源の一つと考えられており、特にヨードメタンの多くが海洋起源と信じられている。本研究では、海洋由来のモノハロメタンの時空間変動とその要因を明らかにすることを目的とした。北西太平洋の亜寒帯とベーリング海、チャクチ海で海洋観測を実施した。従来研究により、生物生産性の高い混合水域の表面水中で高濃度のモノハロメタンが報告されていた。また、寒冷な海の表層水中(水深5m)ではCH3BrとCH3Clの濃度が大気分圧に対して未飽和であることが報告されていた。本研究により、寒冷な海でも、表層以深でモノハロメタンの濃度が高くなることが明らかになった。北海道噴火湾では中層水(10~60m)で高濃度になり、北極域チャクチ海では底層水(陸棚上の堆積物直上水)で高濃度になった。噴火湾中層には密度躍層があり、老化・死滅細胞が浮遊・蓄積する。いっぽう、北極域チャクチ海の陸棚上底層には、珪藻ブルームで老化した細胞が海底に堆積してから死滅する。本研究の海洋観測の結果より、植物プランクトンが死滅するタイミングでモノハロメタンが活発に生成されることが考えられた。植物プランクトン(珪藻類のタラシオシラ)の培養実験の結果、対数増殖期にはモノハロメタンの生成は確認されなかったが、対数増殖期の後、定常期から死滅期にモノハロメタン3成分が生成されることが明らかになった。つまり、海洋観測と培養実験の両面から、植物プランクトンが死滅するタイミングでモノハロメタンの生成が活発になることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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