研究課題
海洋溶存有機物は地球表層における最大級の還元型炭素プールを構成するが、そのプールが定常状態下にあるのか、あるいは非定常状態下にあるのか不明である。溶存有機物の90%以上は生物学的に難分解であり、難分解性成分が海洋溶存有機物プールの挙動を支配する。近年、難分解性溶存有機物の生成機構として微生物炭素ポンプという新しい概念が提唱された。微生物炭素ポンプとは、海洋細菌が易分解性有機物を難分解性溶存有機物へと変換し、それらは長時間(~数千年)分解されずに海水中に留まり、炭素循環から隔離されるという機構である。しかし、そのメカニズム解明および定量的評価には至っていない。そこで、本研究では、海洋細菌が生成する腐植様物質に着目し、微生物炭素ポンプのメカニズム解明および定量的評価を行う事を目的とした。得られた主要な研究成果は以下の3点である。(1)沿岸域および外洋域の腐植様蛍光物質の量的・質的な分布を3次元蛍光光度法-Parallel Factor Analysisを用いて明らかにしたところ、太平洋全域の中深層における腐植様蛍光物質は同質である事が分かった。すなわち、海洋細菌由来の難分解性腐植様物質が海洋中深層に普遍的に分布している事が分かった。また、日本海と西部北太平洋の比較から、日本海深層水中では腐植様蛍光物質が蓄積している事が明らかになり、その蓄積現象は他の海洋深層でもおきている事が示唆された。(2)in situ蛍光センサーを用い、外洋域の腐植様物質の高解像度分布を世界で初めて評価した。また、in situ蛍光センサー値の補正方法を確立した。(3)海洋細菌単離株による難分解性溶存有機物の培養法を確立し、Alteromonas macleodiiによる難分解性溶存有機物の生成メカニズムを評価し、その生成効率を検討した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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