研究課題
気候変動のメカニズムを解明し影響評価を行うためには、過去の変動を把握することが必要である。しかし、機器観測が始まる前の気候データは「寒暖」などの定性的な指標が多く、解析を妨げる要因となっている。本研究では、過去の気温変動を定量的に明らかにすることを目指して、鍾乳洞内の鍾乳石(石筍)の研究を行った。初年度から昨年度にかけてナノノリットルレベル(50-300nL)の流体包有物の水の酸素・水素同位体比を、高い再現性で計測可能な測定システムを開発し、当初目標に近い感度・精度を得ることに成功した。本年度は、手法に関しては、測定時間を短縮するための改良実験を実施した。また、開発した流体包有物の同位体比測定法を用いて、沖縄本島玉泉洞で採取された石筍を中心に測定を行った。過去数十年(U-Th年代, 5-80 yr before AD2013)に成長した石筍の包有水の酸素・水素同位体比は、過去2年間にわたって観測した沖縄県玉泉洞内の滴下水と整合的であった、また、過去3年間にわたって観測した降水の同位体比組成とも一致していた。これらの結果は、過去の降水の同位体比組成を石筍中の流体包有物から復元可能であることを示唆している。また、石筍の炭酸カルシウムの酸素同位体比組成と組み合わせることで、最終氷期(2万6千年前)の試料を測定し、気温推定も行った。推定気温はこれまでの海底堆積物のプロキシに基づく見積りよりは3度程度低い値であった。動的効果の影響を強く受けている2層については、炭酸カルシウムのdelta-18Oが高い値を取るために、低い気温推定値を与えてしまうことも示した。これらの結果は、国内・国際学会で口頭発表するとともに論文にまとめ国際誌に投稿した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Island Arc
巻: 24 ページ: 61-72
10.1111/iar.12076