研究課題/領域番号 |
24681007
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
細野 高啓 熊本大学, 大学院・先導機構, 特任助教 (30367065)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 安定同位体比 / 地下水 / 脱窒 / アナモックス / 熊本 / 沖縄 / スペイン |
研究概要 |
地下水中での脱窒反応と浄化能力を評価するN-S-C同位体法を,実験と野外での実証により構築するのが本研究の目的である.研究は1.実験,2.調査,3.分析の三パートに区分される.平成24年度は特に実験と熊本平野における帯水層調査・分析に力を入れることを計画し,予定通りの計画推進の中,予想以上の成果を得た. 1.実験については,従属および独立栄養脱窒の室内培養実験を通じ,各反応系におけるN-S-C同位体応答を捉えることに成功した.中でも従属栄養脱窒反応における酸素同位体変動,独立栄養脱窒反応における炭素同位体変動では予想しなかった同位体分別法則が確認され,セオリーの確認に加え,重要な学術的知見を得るに至った.引き続き追加実験を進める.アナモックス反応については古川教授の退官に伴い熊大での実施が不便になった.しかし,来年滞在するバルセロナ大学の研究室で同様の実験を共同で行うことができそうなため,引き続き計画を進める. 2.調査に関し,熊本地下水研究では予想以上の成果を挙げることができた.全ての分析を終了させ,汚染の起源ならびに地下水流れに沿った脱窒特性が明らかとなり,これを国際誌Water Researchに掲載するまでに至った.また,スペイン北東部Osona盆地と沖縄本島南部での現場視察を行った.ここで,モニタリングを予定していた脱窒壁研究に対し,いずれのケースも予算や企業側の事情により,早々には進まない.逆に,熊本での自然脱窒特性の解明はこれに対する回答を得た形になる.沖縄に関しても現場調査を続け,自然脱窒特性研究ならびにカラム実験により対応できる考えを得た. 3.分析(N-S-C同位体比)のルーチン化は申請者が中心となり何とか進めているが,現予算では技術スタッフを通年雇用することは困難である.当初計画にあった4年間連続雇用は困難なため,前半2年はパートとして短期雇用(実質2~3ヶ月間),後半2年を通年フル雇用することで研究を維持したい考えである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年の主たる計画にあげていた1.実験と,熊本地下水における2.調査は,前者に対しては予期していなかった興味深い学術的知見を得られたこと,後者に対しては,一部の研究(脱窒壁研究にとって代わる)が早くも論文化まで達成できたことから,予想以上の進展であった.また,アナモックスの実験や脱窒壁研究に対しても,いくつかの障害があったが,当初予定を実現できるような現実に即した計画を立てることができた.一方,3.分析推進については,通年雇用に必要な予算の確保が困難なことと,来年度は野外調査がメインのため不在期間が長いことを考慮すると,全体として研究計画の後半二年間により多くのウエイトが置かれることになる.以上から,今後三年間を見据えた上でH24年度の進展状況を評価するなら,(2)おおむね順調に進展しているという評価が妥当であろう.
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の全体計画に示した計画に沿って研究を推進する.既に述べたように,アナモックスの実験はH25年度滞在予定のバルセロナ大学にてAlbertSoler教授の研究室と共同で進める計画である.また,沖縄における脱窒壁研究は,自然帯水層浄化の実態を調査すること,また,カラム実験によって現場に即した状況を実験的に再現することにより,汚染浄化対策に資する見解を得るという方針で,引き続き現場調査を進める.熊本において,人工脱窒壁にとって代わる,自然脱窒スポットを発見したため,今後はこの自然脱窒壁を利用してマルチ同位体研究を推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
交付決定された配分研究費では,当初想定していた大学に定められた雇用規定による技術スタッフを4年間通じて通年雇用することができない.この現状に対応するため,技術スタッフの協力が不可欠となるルーチン分析による大量試料の分析,分析データの解釈ならびに論文作成補佐を,何とか後半二年間に集約させることを考えた.したがって,初めの二年間は低賃金による謝金スタッフを短期間雇用し,最低限必要な作業を進めることにする.これに沿い,H25年度は実験作業や国内外における採水野外調査がメインとなるため,また,世界的Heガス(分析装置のキャリアガス)枯渇に伴い分析の一時中断を引き続き余儀なくされているため,H24年度同様,年2-3ヶ月間の雇用を計画している.結果,不十分に配分された雇用費の一部を残り二年に回すことにより,後半二年間は大学の定めた規定による技術スタッフの雇用が可能となる.助成金制度の力を借りることで効果的な資金運用が可能となるため,これによって全体の研究計画は問題なく進行できる手応えを感じている.
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