研究課題
地下水中での脱窒反応と浄化能力を評価するN-S-C同位体法を、実験と野外での実証により構築するのが本研究の目的である。研究は1. 実験、2. 調査、3. 分析の三パートに区分される。平成25年度は特に実験の推進、熊本地下水のマルチ同位体比分析・解析、また、バルセロナ大学におけるマルチ同位体研究に力を入れることを計画し、予定通り研究を推進した。1. 実験については、昨年度に引き続き、従属および独立栄養脱窒の室内培養実験を通じ、各反応系におけるN-S-C同位体応答をより細かく捉えることに成功した。アナモックス反応については古川教授の退官に伴い熊大での実施が不便になった問題があったが、本年度滞在したバルセロナ大学の研究室で目的に叶ったの実験を共同で開始することができた。このチャンスを逃さず、来年度以降も引き続き共同で計画を進める.2. 調査に関し、昨年度までに熊本地域において、地下水流れに沿った脱窒特性が明らかとなっていた。本年度は、スペイン北東部Osona盆地における地下水データを吟味し、熊本地域との比較を通し、マルチ同位体法提唱に向けた構想を構築した。加えて重要な沖縄南部地域において、月ごと採水を継続した。3. 分析(N-S-C同位体比)のルーチン化は申請者が中心となり何とか進めているが、現予算では技術スタッフを通年雇用することは困難である。当初計画にあった4年間連続雇用は困難なため,前半2年はパートとして短期雇用(実質2~3ヶ月間)してきた。後半2年を通年フル雇用することを目指しており、スムーズな研究推進を維持したい考えである.
2: おおむね順調に進展している
今年の主たる計画にあげていた1. 実験と,熊本地下水における2. 調査について、いずれも国際誌への投稿準備が進んでおり、大方予想通りの進展といえる。また、アナモックスの実験や脱窒壁研究に対しても、いくつかの障害があったが、当初予定を実現できるような現実に即した計画を立て、実行に移すことができた。沖縄南部地下水採水調査についても予定通り進んでいる。バルセロナ大学ではマルチ同位体法提唱における構想が構築でき、かつ、先にも述べたアナモックスについての培養実験を共同で開始することができた。以上から,今後二年間を見据えた上でH25年度の進展状況を評価するなら,②おおむね順調に進展しているという評価が妥当であろう。
基本的には計画通り研究推進を実行する。具体的に次年度は、①実験結果における成果物作成、②アナモックス培養実験、③熊本地域を題材とした、また、スペインにおけるデータ/情報を合わせたマルチ同位体法の提案、④沖縄南部地域ならびに他地域におけるマルチ同位体法の応用、方法論の妥当性実証、をそれぞれ推進する。
研究期間全体の予算決定額の範疇において、計画していた4年間連続での研究スタッフ雇用は困難となったため、後半2年間においてスタッフの雇用を計画してきた。H26年度以降にポスドクもしくは技術スタッフを雇用するために繰り越してきた金額に相当する。H26年度以降にポスドクもしくは技術スタッフを雇用するために使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件)
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