研究課題/領域番号 |
24681009
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研究機関 | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
研究代表者 |
足立 淳 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (20437255)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 / 質量分析 / プロテオーム / リン酸化 |
研究概要 |
本研究では質量分析計を用いた高感度な翻訳後修飾プロテオーム解析を行うことで、翻訳後修飾を介した新たなDNA 損傷応答シグナルを明らかにすることを目指している。 平成24年度までに、約27000リン酸化部位について放射線照射直後から1時間後までの変動データを取得し、リン酸化部位近傍モチーフと蛋白-蛋白相互作用情報を基にした、リン酸化酵素活性化予測を行った結果、これまでDNA損傷シグナルとの関わりが知られていないリン酸化酵素群の活性化が予測された。 平成25年度はこれらの酵素のインターラクトーム解析を行った。Hela細胞にこれらの酵素のFLAG融合タンパクを発現させ、放射線照射、非照射の条件下で抗FLAG抗体で複合体を精製し、質量分析計を用いて、複合体因子を比較定量した。この放射線による複合体構成因子の動態解析によって、非照射時と照射時で変動しない複合体因子は少数であり、放射線照射によって、構成因子が大きく変わることがわかった。またこれらの因子には、リン酸化、ユビキチン化、アセチル化に関わる酵素群が含まれていたので、複合体因子の翻訳後修飾(リン酸化、ユビキチン化、アセチル化)についても解析を行い、これらの酵素自体も含めた複合体因子の翻訳後修飾情報を取得した。次年度は、これらの複合体構成因子がDNA損傷応答シグナルに及ぼす影響について機能解析を行い、DNA 損傷応答への関与を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン酸化プロテオーム解析によって見いだしたDNA損傷関連キナーゼ群から、それらのインターラクトーム解析へと展開し、複合体因子の構成が放射線によって大きく変わること、また翻訳後修飾(これまで知られていなかった新規修飾部位を含む)も変化することを突き止めた。また当初の予定にはなかったアセチル化についても解析を行い、翻訳後修飾を介した新たなDNA 損傷応答シグナルの解明という目標に沿って研究の幅を拡げている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで取得したデータを統合したDNA損傷シグナルデータベースを作成し、各データを詳細に比較し、既存データも活用することで、機能解析を行う複合体構成因子の絞り込みを行う。その重要性が示唆された複合体構成因子については、放射線感受性への影響やDNA損傷部位への集積への影響について機能解析を行い、DNA 損傷応答への関与を調べる予定である。
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