研究課題
研究代表者らは、これまでの研究により、水生植物の根圏には化学物質分解能に長けた特殊な微生物が選択的に集積、活性化されていることを明らかにしてきた。本研究では、水生植物による根圏への特定微生物群の選択的集積、活性化のメカニズムを、水生植物に対する微生物群の応答の側面から遺伝子発現のレベルで明らかにし、人為的に根圏微生物群を制御した効率的水質浄化技術開発につなげるための知見の集積と制御因子の解明を目的としている。平成26年度は、平成25年度から引き続き、ウキクサ根圏から分離された4-tert-ブチルフェノール分解菌Sphingobium fuliginis OMI株と水生植物の共生時における遺伝子発現解析データの詳細解析を実施するとともに、コウキクサ根圏から分離された植物生長促進微生物(PGPB)であるAcinetobacter calcoaceticus P23株を用いて、OMI株と同様の解析を実施した。OMI株の遺伝子発現解析の結果、水生植物との共生時には、IV型線毛合成、化学走化性に関与する遺伝子群の顕著な発現が確認された。なお、IV型線毛はグラム陰性細菌に広く分布しており、表面への付着、twitching運動などの役割が報告されている。これらのことから、OMI株はウキクサあるいはコウキクサとの共生下では、化学走化性に関する遺伝子群を高発現させることで根圏へ移動するとともに、線毛合成に関する遺伝子群を高発現させることで根の表面に付着するメカニズムが推定できた。なお、P23株については、OMI株での解析によって得られたデータを参考に粗解析を実施したところ、少なくともIV型線毛合成に関与する遺伝子群の顕著な発現が確認され、OMI株と同様のメカニズムによる根圏への定着の可能性が示唆された。今後、これらの遺伝子群の発現制御因子の特定に向けた研究の進展が期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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