研究課題
本課題は単結晶中性子構造解析による光誘起現象の「その場観察」法を確立することを目的としている。平成26年度は前年度までに製作した光ファイバー付きクローズドサイクル型4K冷凍機を用い、やはり前年度までに調製した励起状態プロトン移動(ESIPT)を伴う有機発光材料として知られる2-(2'-hydroxyphenyl)benzimidazole (HPBI)の単結晶(2 x 2 x 0.3 mm)の光照射前後の単結晶中性子回折測定を行った。HPBI単結晶では蛍光励起スペクトルの温度変化から温度による分子内プロトン移動が示唆されていたため、光照射回折実験に先立ち4Kおよび293Kでの単結晶中性子構造解析を行った。測定はJ-PARCの単結晶回折計SENJUを用いた。構造解析の結果、室温で分子内N...H水素結合距離が僅かに短くなったものの、予想された温度変化に伴う分子内プロトン移動は観測されなかった。このことから、蛍光励起スペクトルの温度変化については分子内プロトン移動以外の要因の存在が示唆される。また、光照射によって生じると考えられるHPBIの分子内プロトン移動体の存在を観察するための可視光in-situ照射単結晶中性子回折測定は同様にSENJUを用いて行った。光源としてキセノン光源を用い、ロングカットフィルタを用いて425nm以下の波長の可視光を選択的に照射したところ、試料温度17Kでのin-situ光照射単結晶中性子回折測定を行うことに成功した。この測定では光照射下で試料結晶を2軸で回転させながら構造解析に必要な逆空間の情報をスキャンすることに成功しており、構造解析を目的とした極低温下でのin-situ光照射単結晶中性子回折測定法を確立できたと言える。測定後の試料結晶はわずかなひび割れや透明度の変化が見られ、何らかの反応の進行が示唆されることから、現在慎重に解析を進めている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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JPS Conf. Proc.
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ICANS-XXI Proceedings
Chemistry - A European Journal
日本結晶学会誌
巻: 56 ページ: 301-306
10.5940/jcrsj.56.301