研究概要 |
ナノ空間に閉じ込めた光は,物質系の電荷やスピンと強く相互作用すると予想される。光の閉じ込めを,磁性材料や超電導材料を用いて実現できれば,スピン・電荷・フォトンが協同的に結合した新規機能性の発現が期待される。ところが,磁性や触媒活性等のd電子特有の機能を有する金属種は光学周波数領域での誘電損失が大きく,光の閉じ込めには不向きである。本研究では,「d電子機能性」と「キラル構造に基づく非相反応答化」を導入したプラズモニック構造構築により,複合機能性を持つナノ構造の構築と局在光に本質的な協同現象の発現を目指している。 これまでに、d電子の局在性が強い金属種におけるプラズモン共鳴特性を明らかにするため、CoやFe等の磁性金属について、その光学特性とナノ構造のサイズ・形状の関係を理論計算に基づく手法で明らかにしてきた。更に、PtやPd等の高い触媒活性を示す金属種については、理論設計を基に実際にナノ構造を構築した。ナノ構造体の作成では、単分散なポリスチレン粒子膜をマスクとして金属の蒸着角度を変えて複数回蒸着することで、Pdナノ構造が周期配列した基板の作成に成功した。すでに、可視光領域にプラズモン共鳴由来の吸収を示すナノ構造体の構築に成功している。また、d電子機能の一種であるPdへの水素吸蔵効果を利用し、プラズモン共鳴を環境中の水素濃度によって動的制御するという機能性プラズモニック構造の開発に成功した。従来のプラズモニック構造は、ナノ構造の形状によって決まる静的な光学特性を示す材料として考えられていたが、その動的制御はプラズモニック技術の大きな可能性を提示したといえる。
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