H26年度に作製された、細胞膜透過性に優れるポリエチレンイミンとステルス性に優れるポリエチレングリコール誘導体ポリマー(p(PEGMA))にて修飾されたナノ粒子の特性評価を行った。p(PEGMA)グラフト重合の開始点部位濃度の増加に伴い、得られる試料の有機物含量も大幅に増加しており、ナノ粒子表面がp(PEGMA)鎖で密に被覆された試料が得られたことが分かった。またいずれの試料のゼータ電位値は、重合前の状態(約40mV)と比較して小さくなって(10-20 mV程度)おり、ナノ粒子がp(PEGMA)鎖によって均一に被覆されていることが分かる。また、いずれの試料も生理食塩水に対して優れた分散安定性を示した。 つづいて、がん細胞への取り込み効率を上昇させる細胞内動態制御技術の開発を試みた。具体的には、通常組織部では膨潤したp(PEGMA)ブラシがPEIを遮蔽している(ステルス状態)が、エンドソーム内の低pH条件(4.5-6.5)でヒドラゾン結合が開裂し、p(PEGMA)鎖を脱離させる表面の構築を目指した。P(PEGMA)鎖が脱離して細胞膜透過性に優れるPEI部位が露出すれば、がん細胞内への侵入・蓄積の促進が期待できるためである。PEI上に導入されたATRP開始部位をpH = 5で開裂するヒドラゾン結合部位(-C=N-NH-)をもつATRP開始部位に置き換えることを試みたが、その合成は極めて困難であり、目的とする化合物を得る事ができなかった。ヒドラゾン結合部位をもつその他のATRP開始化合物についても合成を試みたが、残念ながら目的とする化合物を得る事はできなかった。
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