研究課題/領域番号 |
24681030
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 雄高 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324451)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / フレキシブルエレクトロニクス |
研究概要 |
本年度はフレキシブルCNT TFTについて高移動度n型素子の実現に取り組むとともに、CNTへの電界集中効果を利用したOLEDの低電圧動作の可能性についてシミュレーションから検討した。具体的な成果を以下に述べる。 ・高移動度n型素子の実現と表面保護 FCCVD法と転写法により、長尺で清浄なCNTによる高移動度なCNT薄膜チャネルを形成した。n型素子を実現するため、CNTに対して電子供給能を持つPEIを塗布する方法を用いた。塗布するPEI溶液の濃度を詳細に検討し、その結果、移動度69 cm2/Vs, ON/OFF比10^5の高移動度n型CNT TFTをプラスチック基板上に実現した。酸素と水の両方が存在していると、素子電流に不安定性生ずることを見いだし、酸素と水の酸化還元反応に起因していることを明らかにした。また、大気由来の吸着分子を脱着した後、低温原子層堆積法によりデバイス表面に保護膜(Al2O3)を形成することにより、プラスチック上に大気安定なn型CNT TFTを実現した。 ・電界集中効果を利用したOLEDの低電圧動作 本年度は、シミュレーションを用いて、CNT薄膜から半導体薄膜へのキャリアの注入について考察した。簡単のために、p型半導体薄膜(Eg = 1.1 eV, 300 nm)への正孔注入に注目し、片側はオーミックコンタクトの平面電極を、もう片側はCNTを模した直径1 nmの細線電極(障壁の高さ = 0.56 eV)を備えた構造について、シミュレーションをおこなった。その結果、CNT間の間隔が125 nm以下の場合において、細線電極に電界が集中することで電極界面付近のエネルギーバンドが急峻に曲がり、平板電極の場合と比較して、最大でおよそ4桁の電流増加が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、プラスチックフィルム上のn型TFTで世界最高の移動度を得るとともに、CNTへの電界集中効果を利用した有機ELの低電圧動作という新規提案をするなど、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高移動度のn型およびp型CNT TFTをひとつの基板上に実現する技術を開発し、ノイズマージンの大きいCMOS回路を実現する。プラスチック基板上においてCNT薄膜を用いたOLEDの低電圧動作を実証する。さらに、柔軟性をもち生体との親和性のあるセンサ集積デバイスを実現するための基礎技術を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していた備品(RF電源)の購入について事前調査を進めたところ、期待される成果(高移動度半導体CNTの優先成長)が得られないと判断し購入を中止した。 半導体CNTの優先成長については共同研究により見通しが立ったため、新たにフレキシブル基板上に各種材料をパターニングするためのマテリアルプリンタを購入する。
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