研究課題/領域番号 |
24681031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮内 雄平 京都大学, エネルギー理工学研究所, 特任准教授 (10451791)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノチューブ・フラーレン / 光物性 |
研究概要 |
平成25年度は、前年度に引き続き、単一カーボンナノチューブの極限的光学測定手法の開発に取り組んだ。まず、前年度までの課題であった、単一ナノチューブを架橋しているスリット端の光散乱の影響を回避するため、幅の広いスリットに架橋したナノチューブを用いた測定を試みた。その結果、幅広スリットを用いた場合でも以前として変調信号に比較的大きなランダム揺らぎが残ることが分かった。その原因としては励起光源の安定性が考えられる。この点について克服するため、平成26年度は、白色光の入射光と直交直線偏光子を用いる方法やバランス検出の手法を新たに取り入れる予定である。平成25年度後半には、極低温における単一ナノチューブイメージング分光実験と、発光寿命測定を同一ナノチューブに対して行えるように実験系を拡張した。低温における輸送特性測定のための実験系についても、上記の光学実験系との融合に向けて立ち上げに着手した。平成26年度は、完成された実験系により、複合極限条件下での光学測定を行う。ナノチューブのアンサンブル試料を用いた基礎・応用物性研究については、平成25年度に複数の重要な成果が得られた。基礎物性としては、ナノチューブのカイラリティごとの電子準位の決定、また、ナノチューブの光機能に関しては、量子光機能応用実現に繋がると期待される励起子の次元性変換による新たな発光増強メカニズムを見いだした。光電変換学理に関しては、ナノチューブ-シリコンヘテロ太陽電池において、ナノチューブへのキャリアドープによる変換効率上昇メカニズムに関する基礎的な知見が得られた。平成25年度に得られたこれらの成果は、次年度に予定している単一ナノチューブを用いた量子相互作用プロセスの解明とその応用研究に向けた重要な基礎的知見を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一ナノチューブの光学測定については、これまでに光散乱と発光の測定系が順調に立ち上がっている。光吸収測定系についてはさらにノイズレベルを下げる必要があることが判明したが、当初想定の範囲内であり、次年度の対応策で解決できると考えている。一方、アンサンブル試料を用いた研究により、ナノチューブ量子多体効果に関する当初の予想以上の多くの知見が得られている。上記のように、若干遅れている部分と予想以上に進んでいる部分があるが、総合的にはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでに立ち上げてきた極低温光学測定系と電流測定系を統合する。また、上述のとおり前年度の課題を克服するための新たな手法を取り入れ、単一ナノチューブにおける光吸収測定を、十分なS/Nのもとで行えるようにする。これにより、複合極限条件下での光学測定系を完成し、ナノチューブにおける量子多体効果と光電変換に関する詳細な知見を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に、本研究代表者の所属機関異動の可能性が生じ、研究継続のため、研究計画にない設備移動費用または異動先から元所属機関への出張費用等が必要になることが予想され、当該助成金の一部の執行を見合わせたため。 平成26年4月より本研究代表者の所属研究機関が名古屋大学に異動となったが、平成26年度が本研究計画の最終年度ということを考慮し、実験設備の異動による設備解体と再構築に伴う実験計画の遅れを避けるため、本研究代表者が元所属機関の京都大学エネルギー理工学研究所の協力研究員を兼務することとし、本研究に関しては、試料作製等を現所属機関の名古屋大学で行い、物性計測実験については、引き続き元所属機関にこれまで構築してきた装置を用いて行う予定である。そのため、当該助成金については、元所属機関への出張旅費や現所属機関での消耗品費、試料作製費用等として使用する予定である。
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