研究課題/領域番号 |
24681032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
筒井 真楠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50546596)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノバイオ / ナノコンタクト / ナノポア / 単一分子 / ゲノム |
研究概要 |
本年度では、面内型ゲーティングナノポア構造を用いた1分子DNAの塩基配列識別の実証を目標とした。トンネル電流による単一塩基分子識別は、分子の電子構造に加えて、電極-分子間の距離やカップリングのバラつきにより生じる電流値の分布を統計的に評価して初めて実現されるものである。そのためには個々の塩基分子について多点電流計測を行い、電流値分布の解析により抽出される最頻電流値の比較が必須である。しかし、従来の電極系では、水溶液中に露出された電極表面を介したサブナノアンペアオーダーのイオン電流が電極間距離に依存しないバックグラウンドとして存在するため、トンネル電流による電極間距離の厳密な見積りが困難であった。そこで、水溶液中において電極間距離を見積もるための手法を新たに開発した。表面が二酸化ケイ素薄膜で被覆された金ナノ接合を、ポリイミドで被覆されたリン青銅基板上に作製した。この基板を3点曲げの要領で屈曲させることで、金接合を機械的に破断させた。そうすることで、接合破断面を除く全ての部分が二酸化ケイ素で覆われた、金ナノ電極対が得られた。作製した被覆電極を用いて電解質溶液中における電流計測結果から、絶縁被覆の効果により、イオン電流を1桁以上減少させることが可能であることを確認した。また、溶媒種に依存したトンネル電流の減衰が観測された。以上のように、絶縁被覆ナノ電極対の新規作製手法に成功し、水溶液中における電極間距離の見積りが可能になった。これにより、面内型ゲーティングナノポアにおけるセンサー電極間距離を、1分子測定中に見積もることが可能になることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面内型ゲーティングナノポアを用いたトンネル電流を指標とする1分子検出の精度および信頼性の向上に寄与する、水溶液中におけるナノ電極間距離の推定手法を確立することなどに成功しており、研究の進捗状況は概ね良好である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当該年度で確立した電極ギャップ推定法を用いて、電極間距離の違いが、面内型ゲーティングナノポアを用いたトンネル電流を指標とする塩基配列解読の精度・確度に与える影響を評価し、DNAオリゴマーを対象とした塩基分子識別の実証に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究計画を進める中で、次年度での研究を促進させるためには、面内型ゲーティングナノポアの電極間距離のバラつきを評価する必要性が高いことが新たに明らかになった。このため、次年度において、その評価に必要となるシリコンウェハー等消耗品費を確保するため、予定していた学会参加を中止するなどして、次年度使用額を残すに至った。 次年度では、エレクトマイグレーション法を用いて作製する絶縁被覆ナノ電極対について、水溶液中におけるイオン電流計測を通してその電極間距離のバラつき評価を実施するために必要なシリコンウェハーや微細加工用試薬を新たに購入する。
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