研究課題/領域番号 |
24681033
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山口 堅三 香川大学, 工学部, 助教 (00501826)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 表面プラズモン / NEMS / フィルタ / 導波路 / 変調器 / センサ / シャッタ |
研究概要 |
近年、LSI技術と大容量光伝送技術を融合させた光電子融合技術が提案されている。表面ブラズモン(Surface Plasmon : SP)は、光の回折限界以下の領域に光エネルギーを閉じ込めることから、光デバイスをCMOS回路と同サイズに小型化できる。研究代表者は、これまで微小領域中での表面プラズモンSPの光増強効果について、構造の観点から検討してきた。もし、SP共鳴波長を単一試料内で自由に可変することができれば、フィルタや導波路、変調器、センサ等多岐に渡る光デバイスへの応用が単一試料・単一構造で可能となり、更なる高集積化・高機能化が期待される。 このようなSP共鳴波長は、構造に依存するため、構造を自由に可動できれば共鳴波長も連動して変化すると考えた。そこで、NEMSアクチュエータで金属サブ波長格子を構成し、SP共鳴波長を電気信号で可変可能なアクティブプラズモンデバイス(Active Plasmon Device : APD)の提案し、その開発を本研究の目的とした。平成24年度からの2年間で、APDの基本技術の確立を目指し、(i)APDの光学現象の解明と、構造の最適化、(ii)作製プロセスの検討と、APDの作製、(iii)評価光学系の構築、(iv)APDの光学特性評価、(v)APDを用いたフィルタや導波路、変調器、センサへの応用開発、を検討することとした。 平成24年度は、(i)~(v)のAPDの原理解明と構造の最適化を明らかにし、APDを用いた各要素技術を開発した。 可視光から赤外光領域におけるSP共鳴及びWoodアノマリ共鳴は、サイズ依存による光学分布モードや構造依存による信号光強度、及びその共鳴波長の選択領域を明らかにした。また、本年度の研究業績より、学術論文6件、国内外の会議発表31件、受賞1件、特許2件、競争的外部資金獲得4件からも本研究の外部評価の高さが伺える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度からの2年間に、APDの原理解明、構造の最適化とその開発を目的とし、(1)APDのSP共鳴波長シフトの解明、(2)数値計算によるAPD構造の最適化、(3)APDを用いたカラーフィルタの開発、(4)APDを用いた可変型SP導波路の開発、(5)アクティブプラズモン変調器の開発、(6)APDを介したセンサの開発、を実施する。 そこで、初年度は、(1)~(3)のAPDの原理解明と構造の最適化を明らかにし、APDを用いたカラーフィルタの開発とした。この結果、可視光から近赤外光領域におけるSP共鳴は、サイズ依存による光学分布モードや構造依存による信号光強度、SP共鳴波長の違いを明らかにした。また、APDを用いたカラーフィルタは、可視光領域において、100nm程度のSP共鳴波長の可変化を実現した。 一方で、(4)~(6)におけるそれぞれのデバイス開発にも着手した。(4)については、本要素技術を採用した可変型ギャッププラズモン導波路の提案、及びその開発に成功した(特願2013-102667、2013年05月15日出願)。(5)及び(6)においても、数値計算における特定の可視及び通信波長帯域(1.55マイクロメートル)でのSPやWoodアノマリ共鳴を合致する構造(最適な金属の種類や金属膜厚、金属格子幅と金属間ギャップ幅)を検討し、決定した。 また、検討した構造の作製と、可視光領域における電圧依存共鳴光学特性の可変化に成功した。現在、既存の透過型顕微分光光学系を拡張した透過及び反射型顕微分光光学系を構築しており、それぞれの実験検証に取り掛かっている((6)については、後述した)。さらに、当初の計画にない、(7)APDを用いたナノ光シャッタ素子としての新たな可能性も見出した。 (6)の光センシングデバイスへの挑戦として、CO_2ガスセンサへの応用を検討した。同時に、ガス検知用センサの仕様調査、及び本技術に対する48社の企業評価(nanotech展を始めとする展示会への出展や企業への技術紹介を繰り返し、本技術の改善点調査)を行った。その結果、外部変調によるSP共鳴波長帯の可変化は、1台のセンサで、様々なガスを検知出来る画期的な技術であり、市場に与える影響は非常に大きいことが分かった。一方で、(1)信号光強度の向上や、(2)共鳴ピーク波長のシャープ化の2つが技術的な課題として集約された。現在、これらの課題についても解決しており、今後は実施例を取得する。 最後に、本研究の客観的な外部評価も非常に高く位置付けており、ナノオプティクスやナノフォトニクスの主要な近接場光学における国際会議(NFO12、CLEO-PR&OECC/PS2013、APNFO2013)で3件の口頭発表として採択、1件(The Best Paper Award : Japan-India Bilateral Seminar on Supramolecular Nanomaterials for Energy Innovation)の受賞と、平成24年度知財活用促進ハイウェイ「大学特許価値向上支援」((独)科学技術振興機構)を始め、3件((公)高橋産業経済研究財団、(公)カシオ科学振興財団、(公)立石科学技術振興財団)の研究助成による外部資金獲得からもその様子が伺える。
|
今後の研究の推進方策 |
開発したAPDの構造を最適な条件へと導くことで、可視光から赤外光領域における幅広い光学領域のSP共鳴波長やWoodアノマリ共鳴を可変化することを明らかにした。また、明らかになった技術的課題を解決するための実施例の取得、及びその改善として、APDの光学現象及び電場増強効果の解明と、構造の最適化をそれぞれのターゲットに絞り、各ステップでPDSAサイクルを繰り返しながら開発を進め、試作品の作製までを研究計画とする。 研究代表者は、これらの実施例を取得することで、実用化の可能性に繋がると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、実用化における実施例取得のため、それぞれのターゲットに絞った各ステップでのPDSAサイクルを繰り返し、第一プロトタイプ製作までを予算に計画する。また、平成24年度に得られた研究成果の発表と最新の情報収集に充てる。
|