研究課題/領域番号 |
24681034
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
川島 洋人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (60381331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 安定同位体比 / 残留農薬 / 危機管理 / 異同識別 / LC/IRMS / GC/C/IRMS / 農薬疑義資材 / 国際問題 |
研究概要 |
本研究は,従来行われてきた不純物を利用した薬物指紋法ではなく,農薬を構成している水素,炭素,窒素安定同位体比を測定することで,国内外の産地の推定や商品ごとの識別を目指している。安定同位体比は石油,石炭,食品などの生産地や生成過程により特徴を有すことが既に証明されており,農薬類の識別にはまたとない指標となり得ることが予想される。具体的には,近年開発された個別化合物安定同位体比質量分析計(GC/C/IRMS及びLC/IRMS)を利用し,農薬を構成している炭素及び水素安定同位体比を高精度分析し,国内産か海外産,また商品ごとの識別を目指す。 平成24年度はGC/C/IRMSに液体窒素を用いたクライオフォーカスの融合した装置を用いて,近年中国産冷凍鮫子問題でも話題になったメタミドボスと農薬疑義資材(夢草,健草源等)に含まれるシペルメトリンの高精度分析法の開発及び異同識別を行った。その結果,クライオフォーカスを用いることでさらに低濃度域においても高精度分析法を確立することが出来,また異同識別も可能になった(これらの結果は既に国際学術雑誌に提出済みである)。また熱安定性の低い農薬類や,水溶解性の高い農薬類の測定のためにLC/IRMSの導入も図った。本学が保有する英国製のIsoprime(安定同位体比質量分析計)に融合するためにLiquifaceを購入した。本装置は国内1号機であったために,設置等に時間が要した。これらは来年以降に本格的に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,液体窒素を用いたクライオフォーカスシステムとGC/C/IRMS(7890,アジレントテクノロジー社製,Isoprime,アイソプライム社製)の融合とLC/IRMSの購入を目指したが,どちらも順調に実施することが出来た。 具体的には前者は近年中国産冷凍鮫子問題でも話題になったメタミドボスと農薬疑義資材(夢草,健草源等)に含まれるシペルメトリンの高精度分析法の開発及び異同識別を行ったが,クライオフォーカスを用いることでさらに低濃度域においても高精度分析法を確立することが出来,また異同識別も可能になった。また高確度を維持するための農薬類の分析手順も決定することが出来た。これらの結果は既に国際学術雑誌に提出済みである。またLC/IRMSの購入に関しては,既に購入済みであり,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,LC/IRMSの立ち上げを実施すると共に,様々な過程(環境中に放出された農薬は生物分解,光分解,加水分解等を経て消失していく)による分別係数推定実験を行う予定である。具体的には,農薬の系(有機リン系,カーバメート系等)ごとに安定同位体比分別量を実験・算出し,レイリー式個位体分別モデル)を用い一般化することを目的とする。 生物分解では,秋田県内の土壌(黒ボク土,灰色低地土等)をバイアル内に入れ,対象農薬の商品を混入し時間の経過と共に採取・分析し,安定同位体比の分別量を調べる。また光分解では,水中に溶解させた農薬に人工光源(キセノンランプ,蛍光ケミカルランプ等)を光強度を変化させ照射し,安定同位体比の分別量を調べる。また相変化では,液体・固体から気化等の相変化における安定同位体比の分別量を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の使用計画としては,分解に関するバイアル,ランプ等の消耗品に使用予定であり,また食品中に残留したことを考慮すると,さらに不純物を分離する必要性も生じるため,大学保有のガスクロマトグラフを2次元化する予定である。 2次元化することで,多数の不純物と測定したい農薬の分離が可能になる。また,安定同位体比質量分析計は価格が非常に高いため,それに比して,消耗品量(ヘリウムガス,酸化炉等)も比較的高額になってしまっている。また前年度に旅費を安く抑えることが出来たので,その分も今年度に使用したいと考えている。
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