天然ダムは、平成16年10月の新潟県中越地震による山古志村山地土砂災害において多数確認されたことから、一般にも広く知られるようになった。天然ダムにより堰き止められた河川に埋没する家屋がマスコミ映像で流れたことから、その被害の甚大性が認識されるに至った。また、平成23年9月の台風12号による紀伊半島豪雨においても、複数の天然ダムが形成されたことに伴い、地震を誘因とするもの以外で豪雨においても多発する可能性が知られることとなり、その機構解明ならびに対策技術の開発研究の重要性が増すこととなった。一方、天然ダム決壊に関する従来の研究は、0.02m^3程度の少土量のダムを対象としたものに留まっており、また、静的水位上昇時の動態観察が中心となっていた。そこで、国内最大規模の人工水路模型(長さ20m超、幅1m)を最大5m3程度の天然ダム決壊の実証実験研究に供するため、動力モータや水流供給用バルブの動作確認から着手した。天然ダム内部に埋設する間隙圧計、流量計、流速計の調整を行った他、水路傾斜を5度に調整し水を急激に流した場合の、供給配管内の流量と水路内を流下する水の流速の関係を調べその直線性の確認を行った。 一般に、天然ダム決壊の評価は、ダムの長さや幅の因子と、渓流の越流流量の関係を基に論じるケースが多い。しかし、天然ダムを形成するに至るまでの流下土砂の運動距離や移動経路によって、特に動的篩い効果などにより天然ダム内部の構造が大きく影響を受けると推定した。天然ダムの内部構造の異方性によりダム決壊強度が強く影響を受ける可能性があるという新たな視点に立ち、ダム内部の構造を調査可能な表面波探査装置を整備した。
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