研究課題
個体を形成する細胞の多様性は、その遺伝子発現を規定する核内のエピゲノム構造に依拠している。しかしながら技術的な限界により、その知見は試料を大量に得ることができる細胞種にほぼ限定されており、その他の系譜についてはほとんど知見がない。この限界を克服するため、申請者はこれまでにクロマチン免疫沈降(ChIP)に適したタグを転写因子Blimp1に付与したノックインマウスの開発、微量なChIP DNAを次世代シークエンサーに適用可能にする増幅法の開発を行ってきた。本研究の目的は、申請者が開発した微量ChIP-seq法を用いて始原生殖細胞のエピゲノム動態を解明し生殖細胞の特性の核内基盤を解明することである。平成25年度は、申請者が作成したBlimp1へのタグノックインアレル(EGFP-Blimp1)を持つES細胞を用い、始原生殖細胞の試験管内モデルPGC Like Cells(PGCLCs)を作成した。この系を用いて、EGFPタグに対する抗体でBlimp1のChIPを行い、申請者が開発した微量ChIP-seq法を用いてPGCLCにおけるBlimp1の結合部位を、Bmp4による誘導後2日目と6日目において同定した。さらに、PGCLC誘導系において転写促進的なヒストン修飾(H3K4me3, H3K27ac)、および転写抑制的な修飾(H3K27me3)についてChIP-seq解析を行い、ES細胞(ESC)、エピブラスト様細胞(EpiLC)、day2 PGCLC(d2PGCLC)、day6 PGCLC(d6PGCLC)、およびLIFd2(d2PGCLCの誘導においてBmp4を加えない細胞塊)における、各ヒストン修飾をゲノムワイドに同定した。もう一つの転写抑制的な修飾H3K9me2については、ESC, EpiLC, d6PGCLCについて解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
申請者は平成24年度に微量ChIP-seq法の確立と、Blimp1結合部位の解析を行う試料として、EGFPタグ付きBlimp1ES細胞の樹立を行った。これを受けて、平成25年度にはPGCLCを用いたBlimp1結合部位の同定、各ヒストン修飾の同定を計画し、概ねその解析を行った。このため、現在までの研究は順調に進展していると考えている。
平成26年度は得られた実験データを、遺伝子発現データ(ESC, EpiLC, PGCLCs、PGCs)や、Blimp1ノックアウト胚の発現データと合わせ、始原生殖細胞決定過程におけるエピゲノム再構築の様態を解明する。
本年度はd2,d6PGCLCについてエピゲノム解析を行った。予備的なデータが出た段階でd2からd6に掛けて劇的な変動が観察され、その間(d3,d4,d5)についても解析が必要になる可能性が示唆された。このためChIP-seq解析の計画を見直し、必要に応じて次年度にも大規模解析を追加できるようにした。また、現在本格的な解析を開始したところであり必要なコンピュータは選定途上である。現在までに得られたChIP-seqデータの解析を遂行し、必要に応じて、d2PGCLC-d6PGCLCの間についてヒストン修飾、EGFP-Blimp1のChIP-seq解析、DNAメチル化解析、Blimp1ノックアウトPGCLCの発現データの解析を追加する。解析用コンピューターは解析状況に応じて導入・更新する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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