研究課題/領域番号 |
24681043
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松井 貴輝 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60403333)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | FGFシグナル / クラスタリング / フィードバックループ / 細胞社会 |
研究概要 |
器官形成において、細胞は自律的に集まって機能的な細胞集団、すなわち「細胞社会」を構築する。しかし、in vitroで細胞を寄せ集めても、集団としての社会性は獲得されない。いったい、どのように社会性は獲得されるのだろうか?本研究では、ゼブラフィッシュ胚の尾部にあるクッペル胞(KV;Kupffer's vescile)の形成をモデルシステムとして用い、この現代科学の問題に挑んでいる。KVの形成は、原腸陥入期に20-30個のKV前駆細胞の集団の出現により開始され、その後この集団は、正中線上を植物極側へ移動し、シリア(微繊毛)を持つ上皮細胞へと分化し、球状に配置され、小器官(KV)を構築する。KVはシリアを反時計まわりに回転させることで、ノード流と呼ばれる水流をつくり、内臓の左右非対称な配置を規定する。これまでに我々は、発生生物学的な手法により解析し、FGFシグナルの正のフィードバック機構がKV前駆細胞の集団形成に不可欠であること、集団形成不全が左右差疾患を引き起こすことを突き止めた。しかし、数理モデルによる集団形成メカニズムを解析したところ、FGFシグナルの正のフィードバック機構のみでは社会性が獲得されるには不十分であることが明らかになった。平成24年度の本研究で、実験と数理を組み合わせた解析を行ったことで、FGFの正のフィードバック機構に加え、細胞接着に依存して、FGFシグナルが増強される、すなわち、細胞外の正のフィードバックループも必要があることが明らかになり、現在、学術論文の投稿準備中である。この成果は、再生医療などで、器官を試験管内で再構築しようとする際に、有用な基礎データとなる可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学の方針により、急遽ラボの引越する必要に迫られたが、実験によるデータの収集、および、数理モテルの構築をすすめ、学術論文の作成に取りかかっている。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ラボの引越により予算執行の時期を変更したが、ほぼ予定通り進行している。研究の進捗によって手直しを加えながら、当初の達成目標を目指して研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗、ラボのセットアップ状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。未使用額を併せた次年度の経費は、ラボのセットアップに必要な経費を考慮しつつ、研究の進捗に合わせて使用する予定である。
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