研究課題/領域番号 |
24681045
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松岡 茂 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特任准教授 (60456184)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質 / 分子認識 / 脂肪酸 / 固体NMR |
研究概要 |
本研究ではヒト心筋脂肪酸結合タンパク質(FABP3)の脂肪酸認識機構の構造基盤解明を目的とする。平成24年度は、固体NMRによる構造研究の準備として、1.精製FABP3中の残留脂肪酸量の定量法の確立、2.ABP3の主鎖^<15>N、^<13>C化学シフトの溶液NMRによる帰属、3.固体NMRによるコンフォメーション解析のための安定同位体標識脂肪酸の合成、4.FABP3結合能を保持した水溶性脂肪酸類縁体の合成、5.脂肪酸含有リボソームを用いた新方法論によるFABP3-脂肪酸親和性の網羅的解析を行った。 本研究で用いるFABP3は、研究協力者である杉山成特任准教授(阪大院理)らにより発現・精製されるものである。大腸菌で発現したFABP3には微生物由来の脂肪酸が結合しており、実験に使用する前に除去する必要がある。1.では、本予算で導入した質量分析装置(島津製作所製)を用い、LC-MSによる高精度の残留脂肪酸定量を可能とした。これにより本研究に用いる全てのFABP3の脂肪酸除去率を管理し、実験の成功率、再現性を飛躍的に高めることができた。2.では、完全^<13>C,^<15>N標識FABP3を用いて、全てのNMR実験の基礎となる主鎖化学シフトの帰属を完了した。林文晶チームリーダー(横浜理研)らの協力を仰ぎ、横浜理研の高感度NMR装置にてデータを効率的に取得した。3.においては、Sebastien Lethu特任研究員(当研究室)を中心に効率的な2H-13C-13C-2Hクラスター標識法の開発と、標識位置異性体の網羅的合成に成功した。これを用いた新規固体NMRコンフォメーション解析法の開発にも、深澤隼特任研究員とともに着手している。4.水溶性脂肪酸類縁体は、リガンドが結合していない精製FABP3が不安定であるため、精製FABP3の安定化・長期保存を可能とすることを目的として、水洗により簡便に除去できるリガンドを設計・合成した。水溶性とFABP3への中程度の結合性を有する、人工リガンドを見出した。5.脂肪酸をリボソームに結合させることで、水への溶解性に関わらず、ITCによりFABP3親和性を正確に評価できる実験法を見出した。本方法論により、超長鎖脂肪酸を含めた生体内脂肪酸の網羅的FABP3親和性解析に成功し、FABP3結合性脂肪酸の正確な構造的特徴が初めて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、試料調製や実験条件の検討を中心に研究を推進した。本研究により開発された脂肪酸含有リポソームを用いたITC親和性解析法により、生体脂肪酸のFABP3親和性の網羅解析、その結果明らかになった精密なFABP3の脂肪酸構造選択性、リボソーム(脂質二重膜)による脂肪酸-FABP3結合促進など、計画当初は想定できなかった重要な発見があった。本研究は、当初の計画以上の結果を伴いながら進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に明らかになった精密なFABP3の脂肪酸構造選択性の構造基盤を明らかにするべく、平成25年度はX線結晶解析、溶液NMR、固体NMRなど、FABP3-脂肪酸複合体の精密構造解析を中心とした研究展開を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型備品などの導入は初年度に完了している。次年度の研究費と助成金は、試薬、試料などの消耗品の購入や研究情報収集、成果発表などの旅費として使用する予定である。
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