研究課題
本研究はヒト心筋脂肪酸結合タンパク質(FABP3)の脂肪酸認識機構の構造基盤を解明する。前年度までにリポソームを用いた脂肪酸-FABP3親和性解析によりFABP3が10-18炭素の幅広い鎖長の脂肪酸に高い親和性を示すことを明らかにした。また、X線共結晶解析からこの鎖長適合には結合サイト内の水分子クラスターが関与することが判明した。本年度は分子動力学計算を行い、幅広い鎖長選択性の分子機構を調査した。その結果、結合サイト内の水分子には明確に役割の異なる2つのクラスターがあり、弱い水素結合を形成するクラスターが、エネルギー損失なく脂肪酸アルキル鎖で容易に置換されることで、FABP3の幅広い鎖長適合を可能としていることが明らかとなった。一方、強い水素結合ネットワークを形成するクラスターは、脂肪酸アルキル鎖の侵入を防ぎ、20炭素以上の極長鎖脂肪酸の結合を弱めることが示唆された。これらの結果から、FABP3による脂肪酸鎖長選択の分子機構を合理的に説明する事が可能となった。このほかに、生体温度における分子動力学計算から脂肪酸非結合状態のFABP3は大きな構造揺らぎを持ち、結合サイトの出入口を大きく開くことで脂肪酸の取り込みを容易にすることを示した。また、NMR、IRラマン、中性子回折を用いたアルキル鎖コンフォメーション解析に有用な光学活性な[2H-13C-13C-2H]標識脂肪酸の合成法を確立した。これらの成果は、脂質メディエータなどのタンパク質-リガンド認識およびそれを標的とした創薬に資すると期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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