研究課題
若手研究(A)
本研究では、RaPIDdisplay法を用いて膜タンパク質などの細胞表面分子を標的とする特殊環状ペプチド医薬の探索を行っている。通常のRaPIDdisplay法では、標的タンパク質をビーズ担体上に固定化した上でペプチドライブラリに対して提示させるが、膜タンパク質の場合は組換えタンパク質の発現・可溶化が困難であるため、本研究では標的タンパク質を発現した培養細胞株やバキュロウィルスを代わりに用いることで、特殊環状ペプチドの探索を行っている。平成24年度においては、Claudin-1および4、Fasレセプター、アセチルコリンレセプター、インテグリンの5種類の膜タンパク質を標的とする特殊環状ペプチドのセレクションを並行して行った。Claudin-1については既にセレクションまで完了しており、取得できた候補配列14種類について標的への結合力の評価を行ったところ、うち4配列についてClaudin-1発現細胞に対する選択的な結合を示唆する結果が得られている。Claudin-4についても、これまでに6配列のペプチドがClaudin-4発現バキュロウィルスに選択的に結合することが確認出来ている。Fasレセプターを標的とするペプチドについては、Fasレセプター発現バキュロウィルスの構築まで完了しており、今後RaPID displayによるセレクションを進める予定である。アセチルコリンレセプター結合ペプチドのセレクションに関しては、カルシウムフラックスアッセイを指標としてアゴニストを取得するセレクションの系の構築を現在開発中である。また、インテグリンを標的とするペプチドのセレクションに関しては、共同研究先から単離精製したタンパク質を供与いただくことができたため、これを用いて特殊環状ペプチドのセレクションを実施し、得られたペプチドがインテグリン特異的に結合することが確認できている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画では、平成24年度においては細胞あるいはバキュロウィルスを用いたセレクション系そのものの確立を目指していたが、予想以上に順調に進んでおり、既に標的タンパク質に結合するペプチドをいくつか得られており、標的の数も5つまで拡大し並行して実験を進めることができているため。
現在進めている5つの膜タンパク質を標的とした特殊環状ペプチドのセレクションおよび取得できたペプチドの効果の検証を引き続き進める。各ペプチドが標的に特異的に結合することが確認されれば、阻害能や血清中での安定性の評価などを順次行う予定である。
一部基金分において1,217,412円の平成25年度への持ち越しが生じた。これは当初の想定よりも物品費(試薬等の消耗品)を抑えることができたためである。平成25年度においては、5つの標的タンパク質に対するセレクションが順次終了し、得られたペプチドの評価の段階に入ることになるため、平成24年度よりも試薬等の物品費が多く必要となる見込みであり、持ち越し分を充当する予定となっている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件)
Nature
巻: 496 ページ: 247-51
10.1038/nature12014
Org Biomol Chem.
巻: 10 ページ: 5783-5786
10.1039/c2ob25306b